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「Aちゃん、準備できた？」
「はい、ゾム先輩」
今日は俺たち2人の晴れの日。
俺は控え室に、新婦であるAちゃんを迎えに来た。
「…ほんまに似合うな、そのドレス」
「ふふ、先輩こそタキシード似合ってます」
「Aちゃんほどじゃないし、ていうかまた先輩って言うてるで」
あの日、再会を果たした俺とAちゃんは、将来を誓い合った。
早い話が婚約だ。
再会した時は、大学をやめてAちゃんの家の近くに引っ越そうかと考えた。Aちゃんに帰ってきてはもらえないだろうし、かといって卒業まで離れて暮らすのは耐えられそうにもなかったからだ。
しかしそれを口にした途端、Aちゃんは豹変。私が悪いとは言ってもそれはダメだ、卒業まで絶対にどこにも行かないから、きっちり通ってから迎えに来て欲しいと。
それでも、と言いかけたが、その真剣な表情を見るとそんなことはできなかった。
「…そういや、坂口ちゃんは？」
必死でAちゃんを探し回っていた坂口ちゃんもあのあとすぐに連絡を取り、無事にAちゃんと会うことができていた。子供のように大泣きして抱き合った、とAちゃんから聞いた。
本当に友達想いの良い子なんだなぁ、なんて思う。今日も意気揚々と式場に入っていくところを見たし、Aちゃんのことはもう見たのではないだろうか。
「あぁ、ももはさっき来てくれました。綺麗だって何回も言ってくれて…ふふ、誰が新郎なのかわからないぐらいです」
「はははは、坂口ちゃんが敵か、困るわ〜」
笑って言うと、Aちゃんも笑い返してくれる。
「あの、ゾム先輩…うぅん、ゾムさん」
「…はい」
「私は、2回もあなたのことを諦めようとしたけど…でも、諦めきれなかった。心の奥にはいつもあなたがいた…やっぱり、あなたがいないとだめなんだと思います」
俺の目を見て言うAちゃん。
…あかん、泣きそう。
「…ゾムさん？」
「うん…なんでもない、続けて」
「ふふ…えっと、私がこんな事言うのも変ですけど…絶対に、私のことを離さないでください。ゾムさんと、一生一緒にいますから」
本当に彼女とは、色々なことがあったけど、だからこそいいところも沢山見えてきた。
彼女こそが俺の最高のパートナーなんだろうな、と思う。
「かっこええこと言うなよ、俺のセリフやで」
「…ふふ、ありがとうございます」
眩しく、儚く笑うAちゃんを、俺は優しく抱き締めた。
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