8話 ページ8
あれが。
あれが理鶯の、運命の番。
Aは呆然と、その男を見つめた。
◇ ◇ ◇
「……はぁ」
ため息を吐き、Aは中がほとんどが空の冷蔵庫を閉めた。
軍にいた頃はこのように自己管理ができないなどということも、なにかをすることが億劫になるということもなかったのだが。
買い出しに行こうと、マイバッグと財布をポケットに突っこんで、Aは家を出た。
◇ ◇ ◇
「……あ」
思わず、間抜けな声が出た。
視線の先には、私服姿で街を歩く理鶯。
会いたくない、そう思って踵を返そうとしたとき、それまで人ごみに遮られて見えなかった人影が俺の目に映った。
理鶯と仲睦まじそうに歩く、黒髪の、男。
綺麗な男だと、思った。
きっちり分けられた七三の艶やかな黒髪に、意志の強さを感じさせる緑の瞳。
そしてなにより、彼らは幸せそうだった。
それがなにより、美しかった。
俺が男を見つめていた時間は5秒にも満たなかったはずだが、男がちら、とこちらに鋭い視線を向ける。
俺は咄嗟に顔を背け、それから逃れるように今度こそ振り向いて、もと来た道を歩き出した。
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狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時