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5話 ページ5

そして、ある日のこと。

海軍兵の寮で同室の理鶯に、俺はついに番となることを求めた。


「理鶯、俺の番に、なってくれないか」


さしもの理鶯も、目を見開いて体を強張らせた。


「……A、それは……」


言葉を詰まらせ、返答に困る理鶯。

ああ、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。


「番のいないΩは、戦場に於て重荷になる。だから誰か番を作らねば、と思っていたんだ」


番のいないΩはヒートなどの面で戦場では確かに重荷だが、抑制剤を飲めばなんとかなる程度でしかない。

結局のところ俺は理鶯と番になりたいだけだった。

海軍兵学校時代に多くの感情を捨てたが、理鶯への愛情は捨てられないままだった。


「……そうか。わかった」


理鶯はおもむろに立ち上がり、俺の両肩に手を置いた。


「……小官が、Aの番となろう」


そっと、理鶯が俺のうなじに顔を近づける。

理鶯の歯がうなじに触れ、食い込んだ。

バチバチッ。

脳天を衝撃が貫いた。

あまりに強い、「魂がつながる」感覚に仰け反りそうになる背を、理鶯の大きな手が支える。

理鶯の口が離れたとき、もう俺は息も絶え絶えに、下腹部をひくつかせることしかできなくなっていた。


「あっ……あっ……りぃ、お……」


うまく力が入らず、くたりとベッドに体を預ける。

ゆるゆると両手を理鶯の後頭部に添え、重力に従うままにふわりと降りてきた唇に吸い付く。

俺の中を、これ以上ない充足感が満たした。

それに浸る間もなく、耳を塞がれて舌を絡められる。


「Aッ……ふ、A……」


頭の中で理鶯の声が反響する。

それがどうしようもなく嬉しかった。

唇が離され、俺の大好きな水色の目と目が合って、互いに笑った。

こうして、俺と理鶯は番になった。

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狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時

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