4話 ページ4
夢を、見ていた。
それは確かに夢だったが、俺の記憶でもあった。
◇ ◇ ◇
「……ぅ、わ」
曲がり角で突然視界に入ったそれに衝突しそうになり、バランスを崩して自転車から降りる。
俺の目の前には、同い年くらいの軍服を着た青年が。
俺はその青年に、目を奪われた。
思春期真っ只中の俺だったが、素直に、綺麗だと思った。
どこか外国の血が交ざっているのだろうか、違和感のないオレンジ色の髪と、透き通った薄い水色の瞳。
整いすぎた顔。
……俺はそいつに、一目惚れした。
「……すまない、不注意だった。怪我はないか?」
呆然と立ち尽くす俺に、青年は問いかける。
その声は低く、心地よい響きを伴って俺の脳を支配した。
「あ、あ。大丈夫、だ。そっちこそ怪我は?」
何度もつっかえながらどうにか答えを返すと、そんな俺の様子が余程可笑しかったのか、小さく笑った。
どうしようもなく愛しくなって、手が伸びそうになるのをすんでのところで踏みとどまる。
「問題ない。すまなかったな」
軽く頭を下げて、青年は去っていった。
そのまま見えなくなるまでその背中を見送って、俺は勉強をしに図書館へ行こうとしていたルートを180度変え、家まで戻った。
そこからの俺の行動は速かった。
周辺の軍学校を調べて、高校を中退して、海軍兵学校に編入する手続きをして。
一ヶ月後には、海軍兵学校の生徒になっていた。
そこで、血反吐を吐くような、という表現も生ぬるいくらいの訓練を受けた。
夜な夜な泣いていた時期もあった。
それでも、這いつくばっては立ち上がり、這いつくばっては立ち上がって強くなったのだ。
そして本格的に海軍兵としての活動が開始し、俺は彼、毒島メイソン理鶯と同期として再会した。
彼は俺を覚えていて、俺は徐々に距離を詰めた。
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狼鬼(プロフ) - 何回も読み返すほど悲しくて、でもとても素敵な作品です。完結するまでずっと待っています。無理をしませぬようお気をつけください。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: 8a6b913a72 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - mikittyさん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!! (2021年1月26日 16時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結まで追い続けます! (2021年1月25日 12時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
龍牙(プロフ) - マームさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉ありがとうございます!!なかなか更新できていませんが、頑張らせていただきます!! (2020年6月28日 10時) (レス) id: 6c80c43520 (このIDを非表示/違反報告)
マーム - めっちゃ好みすぎて何回も読み返しています!!更新頑張ってください!! (2020年6月24日 23時) (レス) id: 12bdf0a400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:龍牙 | 作成日時:2019年5月11日 19時