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67話 ページ32

Aは人タラシだ。
人が嫌いだと言っていたあの頃の面影なんてないくらい人に優しく接する姿に嬉しくなる。寺子屋にやって来る子供達と会話をする時、その長い足を折りたたんで目線を合わせようとする姿には感動すら覚える。そしてにこりと微笑まれた日にはもう、初恋泥棒である。私の恋人は私の生徒の初恋をことごとく奪ってゆくのだ。私もその1人であるのだけれど。
Aは人タラシだ。
特に女子供に優しく接する。正しくその刀を使う道を学んでからか、明らかに紳士的に振る舞うようになった。本人は「女子供には優しくしなきゃ」くらいにしか思ってないのだろうけど、あの中性的で端正な顔で紳士的に振る舞われたらほぼ落ちる。私が女性だったら絶対に落ちている。男であっても現に落ちてるけれど。
Aは人タラシだ。
人を学ぶにつれて自分よりも弱い存在だと認識し、庇護対象と見ている。昔では考えられないほど自己犠牲精神が強くなっていることに私は少し心配になる。この前の風邪を引いた時なんてまさにそれだ。守らさせてくれる暇なんて与えてくれないほどに全てを守ろうとするから少しだけ、彼女に守られる人に嫉妬してしまう。彼女は完璧超人の節があるから私の出る隙がなくやきもきしてしまうのだ。そこが彼女の魅力でもあるのだけれど、好いている人を守りたいと思うのが男というものだ。助けられた時に胸がきゅんと鳴るのは否定しないが。

そんな人タラシのAは今日も健在なようで手ぶらで出かけたと思ったら、両手に大きな荷物を持って帰宅したのだ。困ったように笑いながら彼女は事の顛末を語ってくれる。
小さな女の子が転んで泣いているのを見かけ飴をあげたら、後から追ってきた女の子の親に葡萄をもらう。その後老婦が荷物を運んでいるのを見かけ家まで送ったら苺大福をもらった。土産もできたことだし帰ろうとすると女性が浪人に悪質な絡みを受けているのを見かけ助けたら蕎麦をもらい、家まで送ると女性の母親から感謝されさらにシュークリームをもらう。いよいよ帰ろうと帰路につくと、農作物を獣に食われている農夫がそれを追い払うのに苦戦しているところを目撃し、困っているならと手を貸したら米をもらった。終。
そしてようやく家にたどり着いたというわけである。
つまりAの両手を埋め尽くすのは葡萄、苺大福、蕎麦、シュークリーム、米である。人タラシもここまでくれば引くレベルなのは、私の横にいる子供達にも共感してもらえるだろう。

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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

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