40話 ページ3
僕達がここに来て数週間が経ち、生徒もぼちぼち集まってきた。最初は不審がられたがそれが正常な判断である。大人の男女2人と子供3人はどう見ても異彩を放つ。
住むところと私塾を開ける場所を探し、新しく晋助と小太郎とも一緒に暮らしだした。さらに騒がしくなりとても楽しい。なんだかんだ言っていた銀時も楽しそうだった。
いつものように箒を持って掃除をする。しかし箒はあまり進まない。何故進まないのか理由は明白だ。今日の松陽がなんだか変であったからだ。若干足元が覚束ないし咳をしている。加えて頬が赤く疲労からの発熱かと僕は考えた。それが気がかりで思うように仕事が進まなかったのだ。
ここで考えていても埒が明かない、僕は松陽のところに足を運んだ。教室の戸を開けると子供達が僕に気づき、挨拶を交わす。突然現れた僕に松陽はいつものように変わらない笑みで言う。
「どうしたんですか?」
そんな松陽に近づき、そのまま胸元を掴んで引き寄せ額を合わせた。
「「きゃああ!」」
甲高い歓声が僕の耳を刺した。子供達は何故かきゃいきゃい楽しそうする。何がそんなに面白いのか気になるが先に松陽のことを済ませなければならない。体温計を使わないと正確にはわからないが、きっと熱はあるだろう。そして不思議なことにまた熱が上がったようである。顔が赤い。
寝かせねばと思って僕はそのまま松陽の手を引く。
「松陽、寝るぞ。お前らは僕が戻るまで自習しててくれ」
「「はーい」」
「えっ?ちょっと待っ…」
制止する松陽の声を無視してそのまま手を引いた。
ピピピと電子音の鳴った体温計を確認して、やはりかと声をもらしたり38.3℃、風邪だろう。
「えっと、ごめんなさい?」
「気にしないでいいから病人は早く寝ろ」
枕元に飲み物と取り敢えずの薬、そして濡れタオルの換えを用意して置いておく。
「僕は続きの授業しに行くからな。じゃあまた後、で?」
その場から立とうとした僕の袴の裾を松陽が握る。本人も無意識だったようでしばらく見つめ合った。次に動作を起こしたのは松陽で、気まずそうに目を泳がしている。
「あ…あの…これは、その……」
しどろもどろになる松陽にやっと理解が追いついた。
「もう少しいるよ」
風邪引いたときは心細いからなと頷く。
松陽は深く布団を被って言った。
「…ありがとうございます」
結局松陽が眠るまで手を繋いでいた。離す時に、「僕が」離れがたいと感じてしまって首を傾げた。後でまた会うだろうに、何故だろうか。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時