二話 ページ3
｢だよね！じゃあ早速やっちゃうか〜！やり方はまずこの魔法陣の上に、水晶の欠片を並べて〜……｣
｢あっ！部長ちょっと待って下さい！ラフだけ描かせてほしいです！｣
水無瀬響は、急いでスケッチブックを取り出し、机に集まる人の合間から、儀式の風景を描こうとする。しかし身長もあってか、景色が見にくく筆が進まない。
｢俺のとこ、空いてるッスよ｣
｢帝！本当！？ありがとう！｣
赤いマフラーに手を当てながら、夏目帝はもう片手で響の服を引っ張った。
彼女を大体このまま放っておいたら何かしらやらかす。そうなる前に、対処してしまった方がいい。消極的な帝でも、流石に自分に被害が及ぶのは怖いので、動くことを決意したのだろう。
｢よし！部長、出来たので続けちゃってくださいー！｣
機嫌よくスケッチブックを抱え込み、笑顔を浮かべる響に影響され、かんなも笑顔で頷く。
｢ん、おっけー！じゃあ並べちゃうよ？｣
｢ねぇ部長。ちな、それって並べたら召喚される系〜？｣
バングカラーのギャルこと、櫛淵円は巻いた髪を触りながら、かんなに尋ねる。彼女も瑠亜のように、勘違いされる身なりだが、オカルト興味が無い訳ではない。寧ろ、興味があるのでここにいる。
おまけに瞳を輝かせながら、身を乗り出す勢いで儀式に食い入っている。
｢いや？たしか、並べてから、お酒を一滴たらすと……って、感じだったと思うんだけど？｣
｢え！？お酒って……ぼくたち未成年ですけれど！？｣
瑠亜が恐る恐る、法律とか大丈夫かな……と口にすると、前方から穏やかな声が響く。
｢大丈夫だよ。なんせこれは調理酒だからな。あぁ、そういえば部長。10円余ったから返しておくよ｣
花丸満点はうんうんと頷き、ポケットから10円玉を取り出して、指で弾いた。金属特有の硬い音が、くるくると円を描き、見事に机の上に響く。
｢10円って……満点が持っててもいいんだけど……ま、受け取っとくよ｣
机の上に着地した10円玉をかんなは受け取り、そのまま左手に収めておく。生憎今日の服装にポケットがなかったのだ。鞄に入れようにも若干遠いので、まぁ後でいいかと思い、彼女は調理酒の蓋を開けた。
独特かつ不思議な匂いが、部室の中に充満する。滅多に嗅ぐことのない匂いに、顔を顰めるものも何人か現れた。
匂いに対して感想を抱くものはいなかったが、もし、今生徒会がここを訪れたら、確実に廃部だな、というのが部員の総意であった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽんたこ(プロフ) - 嵩画さん» お返事遅れ申し訳ありません……学業、バイト等々が一段落つきましたので、更新するよう努めます……！ (2021年6月17日 22時) (
レス) id: 3c612b46c4 (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - いつも楽しみに読ませて頂いております。どうぞ無理のない範囲で更新頑張ってください…！ (2021年6月2日 0時) (レス) id: 7cfb5b094b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
