44話 ページ46
夜も更けて、
先に帰ってしまった
悟、硝子、後輩ズの姿は
既に高専内廊下には見当たらず
最低限の電気をつけただけの廊下は酷く寂しい。
みし、みしとなる
板張りの廊下を夏油と話ながら渡る。
ふと見上げれば窓の外には
ぽっかり月が浮かんでいた。
「あ、月…」
『ほんとだ。綺麗だね。』
まんまるの、白銀の月。
真っ黒な夜空に
はっきりとそれは姿を現している。
そう言えば、今朝テレビで言ってたっけな…。
『今日はスノームーンなんだって』
「スノームーン…?」
ゆっくりと今朝の記憶を辿りながら説明する。
『そう。雪の降る頃に出る
なるほど、と言って夏油は立ち止まる。
しげしげと見つめる夏油のその瞳には、
スノームーンが映っていた。
それだけで絵になるそれを
写真に収めようとして、やめた。
理由はなんとなくだ。
ただ、なんとなく。
暫くの沈黙が2人の間に降りて、
次の瞬間夏油が口を開いた。
「…あの月は、君みたいだね」
『ああ、
言われてみれば、確かに同じ銀色だ。
「うん、凄く綺麗だ…キラキラしている」
なんだか気恥ずかしくってしょうが無い。
私が褒められたわけでもないのに。
もう、ずっと前から夏油に恋している。
今までの私は彼の彼女に
なりたいと望んだことはなかった。
でも、なんだか欲が出て来た。
この人に見て貰いたいなって、
この人の特別になりたいなって。
今までならそんなこと
望まなかったのに、不思議だ。
そんなことを考えていたからだろうか、
言葉が自然と口から零れた。
『…月が、』
「うん?」
夏油は私の言葉を聞き返す。
私は月をじっと見つめ
視線を逸らすことなく言葉を継いだ。
『月が、綺麗ですね』
「…そうだね」
かの有名な、あの言葉だ。
説明はいらないかも知れないが、
夏目漱石が「
日本語に訳した時の言葉。
好き、と言うには恥ずかしい。
断られたときに傷つきたくない。
そんな気弱な私の気持ちの現れだった。
ああ、馬鹿みたい。
いつもみたいに茶化してしまえば良いのに!
自分を嘲笑うような気持ちが胸の奥で燻る。
でも、それで良い。
断られたときに笑顔で居られるように、
夏油を困らせないように。
きっと、その方が良い。
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chiaki0708(プロフ) - わぁーーーーぁーーーすっっっっごく良きな作品でした!!!夏油さん推しの方是非!!読んで欲しい!!!! (2022年1月17日 8時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - 古高 カスイさん» コメントありがとうございます!完走までお付き合いいただき、本当にありがとうございました…!すみません、気がつきませんでした。急遽修正いたします。ご報告ありがとうございました…!! (2021年3月10日 20時) (レス) id: 400d2ea662 (このIDを非表示/違反報告)
古高 カスイ - 完結おめでとうございます!!お疲れ様です。あとがきの1行目が、めまして、になってます。新作も読ませていただきます。 (2021年3月10日 20時) (レス) id: 4f2d26b0e9 (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - 古高 カスイさん» コメントありがとうございます!コメントをいただけると執筆が捗ります☆そうですね、神様は優しくて優しくないって誰かが言ってたような…。展開は遅めですが、これからも更新頑張ります! (2021年3月6日 7時) (レス) id: 400d2ea662 (このIDを非表示/違反報告)
古高 カスイ - バレンタインの神様って、優しいのか、意地悪なのか、わからないですね(笑) わーい!!やっと二人がキスした!!嬉しい!読んでて楽しいです!更新頑張ってください。 (2021年3月5日 23時) (レス) id: 4f2d26b0e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白揚羽 | 作成日時:2021年2月25日 15時