【ky】ねぇ、愛して。【短編集】

花吐き病。 ページ12

【嘔吐中枢花被性疾患】

世に言う｢花吐き病｣。

その症状が出たのは小学生の頃。
隣の男の子に恋をした。それから花を吐くようになった。

医者に言われたのは、｢片思いを拗らせると花を吐いてしまう。｣という事だった。
そんな奇病が存在するなんて。

中学ではその男の子とは離れて気持ちも薄くなった。

これで一安心。そう思えたのは3年間だけだった。


今年からそう、高校生。
またしてや隣の男の子に恋をした。


｢A、おはよう。｣


｢あ、キヨ。おはよ。｣


彼はクラスや学校で女子にすごいモテている。
私もその一部なのだけれど。


｢なぁ、昨日のテレビ見た？｣


｢見たよ〜すっごい面白かった。｣


｢だよな〜！それでさ…｣


キヨはこんな感じで他の女子にも話しているのだろうか？少し妬ける。


｢…A？顔色悪くね？｣


｢ちょっと体調悪くて…保健室行ってくる。｣


｢俺、送ってくよ。｣


｢だ、大丈夫だから！｣


｢…そ、そっか。｣


申し訳ないけど付き添って貰うと余計に悪くなる。
先にトイレに行って吐いてこよう。


｢…うっ…ぇ…｣


便器の中には色とりどりの花が落ちた。
見た目は綺麗なのに、私を狂わせる。

だめだ。まだ気持ち悪い。
今日は一旦帰ろう。


職員室の先生に早退するという事を伝え家に帰った。


｢やば…吐き気止まんない。｣


部屋まで戻ったものの吐き気が止まらず吐いてしまった。


…キヨはよく私と喋ってくれてた。
でも、今日は私が帰ったから他の女子と喋ってるのかな。

寂しい、そんなこと思ったらまた吐いてしまう。
口から溢れてくる、花。
…もうやめてよ。


私は幾度となく吐いた。


ピンポーン。


…誰？ごめん今は出られない。


｢Aー？大丈夫かー、プリント持ってきたぞ〜｣


キヨ…？


階段を上がる音。

だめ。今来たら終わる。引かれてしまう。


｢キ…ヨ…！だめ…！来ちゃ…｣


掠れた声は届くはずもなく。


ガチャ。


｢A…なのか？｣


｢…っ…見ないで！！｣


…終わった。


｢…気持ち悪いでしょ？花を吐くなんて｣


｢…そんなことねぇよ。Aが吐くんなら綺麗。片思いは…誰？｣


｢…だよ｣


｢聞こえない。｣


｢キヨだよ｣


全てが吹っ切れたように私は告白をしてしまった。


｢…！…そっか、俺なのか。じゃあ、治せるよ。｣


キヨが私にキスをした。


｢…ぇ…？｣


｢ほら、両思い。｣


私の口からは白銀の百合が零れた。


※誤字ってました。

満たされたい。→←奪い愛。

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