【YouTuber】貴方の好きなところ【短編集】

せんせい。《カンタ》 ページ23

青い空、白い雲。

髪の間を通り抜ける爽やかな風が、夏を感じさせる。

ジリジリと照りつける太陽を睨めば、誰もいないはずの屋上に、足音が響いた。
ゆっくりと体を起こせば、見覚えのある背中。


「寛太くん？」

「やっぱりここにいた」

私を見つけると、ニコリといつもの笑顔を見せてこちらに手を振る。
その姿が無邪気で、とても20歳を過ぎた大人だとは思えない。

「先生、な」

「はいはい、分かってますよーっ。
さ、と、う、せ、ん、せー」

嫌味たっぷりにそう言うと、貴方は満足そうに頷いた。


「なんで俺の授業出てくれないのー
俺の授業そんなつまんない？」


(そんなわけない)


「せんせーが嫌いだからでーす」


(嘘、大好き)


貴方は、"酷いなぁ〜"なんて笑う。

(嘘だって気づいてよ)


本当なら、今すぐにでも「好き」と言ってしまいたいけど、

私と貴方は、


生徒と教師。


私の理性がそれを許してくれない。



「午後の授業はちゃんと出ろよ」

軽くデコピンをして貴方は去っていく。

(行っちゃうの？)


「せんせ、」

不意に掴んでしまった腕。

「ん？」



「なんでも、無いです…」



「そっか」


私が腕を離すと、再び歩き出す貴方。
その背中に思い切り叫びたい。





「好き!!!!」




言いかけた言葉は空に跳ねた。

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