重なるまばたき ページ10
.
玄関で、立ちすくむわたしと、北斗くん。
何か言いたげな、何か言おうとしているような表情に、胸が詰まる。
何度目かのまばたきが重なって、
北斗くんが困ったように眉を下げて笑った。
「ちょ、一回中入ろ、」と真っ暗なリビングを指差した。
北斗くんがパチ、と部屋の電気をつけて
明るくなった部屋にわたしを入れた。
「なんかお茶とか飲む？」
「大丈夫」
「あっ、部屋暑くない？それとも寒い？」
「ほくとくん」
「テレビも見ていいよ」
「ね、ほくとくん」
何か言いたげな顔をしているくせに
それを言い出すことから逃げているようで
でも言いたそうで苦しそうだから
慌ただしくしていた北斗くんの
袖をちょっとつまんで、
また「ほくとくん、」と呼んでみた。
触れただけでいとも簡単に動きを止めて、
振り返った北斗くんの横顔は
どこか安心したように見えた。
出会ったときからずっと、
わたしの"先生"で歳も離れていて
わたしの知らないことをなんでも知っている人。
憧れのまなざしを、その背中に、横顔に向け続けていた。
そして、いつだって余裕で大人で
わたしなんかがかないっこないくらい完璧だと
思っていた。
でも、今目の前にいる北斗くんは
ひとりの"男の子"みたいで
守りたい、って思ってしまった。
偉そうなんだろう、
どの口が言ってんだ、って自分でも思うけれど
北斗くんも「先生」じゃなくて
ひとりの人間なんだなあ、なんて少し冷静になった。
「ほくとくん」
もう一度呼んだ名前のあとに、
「ごめんね」と付け加えた。
パッと弾かれたように顔を上げた北斗くんは
どこか泣き出しそうで
思わず、だらんとしている彼の右手をすくいあげて、
わたしの両手で包んで温めた。
.
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←恋心 (10/3)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2563人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リカ(プロフ) - 更新楽しみにしています (5月18日 0時) (
レス) id: 88810842d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 続きが気になります！更新待っています。 (2022年5月14日 4時) (レス) @page7 id: aef5fa864f (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 最高です！！！ (2022年5月1日 21時) (レス) @page7 id: 34004b60ef (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます！よろしければまたお付き合いおねがいします。 (2022年4月26日 18時) (レス) id: 7ed4157c8a (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - aaさん» 素敵なお言葉ありがとうございます！また楽しんでいただけたら嬉しいです (2022年4月26日 18時) (レス) @page7 id: 7ed4157c8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つき
| 作成日時：2022年4月18日 3時
