40 温かい ページ41
ギリッと痛んでいく腕。その手は微かに震えているようにも思えた。春くんは、何を思って此処に来たのだろう。そして、どうやって此処がわかったのだろう。
……少し考えたら、すぐに答えへと辿り着く。恐らく竜胆さんが春くんに情報を流していたのだろう。数日前に、どこの病院に行くのか、次の診察日は何時だ、とか1人で交通機関を使っていくのは大変だろうから送っていくとか言われていた。
私が病院からの最寄り駅を伝えてしまったからその際に場所を特定出来たのだろう。一本取られる、とはまさにこの事だ。
「春くんとは、別れたから……関係ない。」
「関係なくねえだろ!俺の子供がAの腹ン中に居るだろうが!」
勢いよく怒鳴る彼に、唖然としてしまう。今更……何を言ってるの?最初は、蘭さんの子どもだって言い切ろうとしたくせに。今頃になって、そんな事言わないでよ。
「……今更そんな事言われても、遅い。」
「……まだ、堕ろしてねえよな?」
唇から震わせる声色。少し焦ったような表情。そんな態度を取られてしまうと、ちゃんと受け入れてくれるのではないかと淡い期待を抱いてしまう。
何も答えられないでいると、掴まれていた腕が離れ、ぎゅっと強く強く抱きしめられる。病院前で、人も居る。春くんは絶対に人前でベタベタとしたがらないタイプだ。
それなのに、人目を憚らずただ、強く抱きしめていた。
「なあ、答えろよ。」
「……堕ろしてない。来週、堕ろす手術する。」
考えてきて、とは言われたし、私の中での揺らぎが大きくなっているけれど、春くんがどう思っているのか分からない限り、堕ろしたくないとは言えなかった。
「……あの時、あんな事言ってごめん。俺が勝手にアイツに嫉妬してた。だから、堕ろすなんてもう言うな。」
嫉妬していた、というのは……私と蘭さんがホテルに入ったあの日の事を指しているのだろうか。
それよりも……春くんはちゃんとお腹の中にいる子どもの事、喜んでくれているのだろうか。まだそれが少しだけ不安だった。不安なのが、私の声色に乗ったまま彼に問いかけた。
「……妊娠した事、一緒に喜んでくれる?」
「凄ぇ嬉しい。俺が絶対にAと腹ン中の子ども大事にする。約束、する。」
私を抱きしめたまま、彼が言葉を続ける。
「……責任取るとか、そんなんじゃなくて。ずっとAと一緒に居たい、俺と、結婚しよ。」
彼の表情が、見えないけれど……確かに言えるのは温かった、ただそれだけ。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時