39 本当の決断 ページ40
「本当に良いの?」
「……はい。」
診察日になり、今の所母子ともに問題はなし。だが、私は堕ろしたいと話をしてみると、決断をした私に、担当医が確認をする。そんな事を聞かれたら、苦渋の決断をしたのに、再び迷いが出てきてしまいそうになる。
私が自分で選んだ事なのに、中絶をしたら後悔してしまいそうだ。……でも、現実はそんなに甘くない。それを、分かっているから、私はこの子と離れるべきだ。
「……一応、来週の水曜日に予約入れておくけど。もし、気が変わったらやめてもいいんだからね。」
「はい。」
辞めて。そんな揺らぐ事を言わないで。折角、私が心に決めて、今……この場に居るのに。グッと拳を握りしめ、唇を噛みしめる。痛みなんて気にならない程に、目尻が熱くなっていって、涙を零さないように必死で俯く。
「今どき、シングルマザーは珍しくないし。何よりも、本当はこのお腹の子を産みたいって、顔に出てるよ?」
「でも、私……っ、」
「来週までに、本当の決断をちゃんとしておいてね。自分の気持ちに、嘘はついたらダメ。」
自分の気持ちに嘘をついたらいけない。……そんな事は、私が1番良く分かっている。それでも、望まれて産まれて来た訳じゃない、なんて子どもに思わせたらいけない。1ミリでも感じ取らせたくない。
来週の水曜日までに……本当の決断をしてきて、なんて。私の思い切って固めた決断を覆すような事を言われてしまって、また1から頭を抱える羽目になってしまった。
病院で会計を済ませ、出口へと向かって歩いた。自動ドアが開いて少し歩いた先には、そこら辺ではあまり見かけない髪色に目が付いた。
……見間違いじゃない。どうして、こんな所に春くんがいるの?私の姿を捉えた彼が、早足で近づいてくる。やだ、話したくない。これ以上、この子を否定されたくない。咎められたくない。
その一心で、私は走りだしてしまう。幸い、まだそこまでお腹は出ていない。無理をしていると自覚をしながらも、彼と合わせる顔がなくて、逃げてしまう。
でも、結局この子の事が気がかりで全力で逃げているつもりでも、すぐに捕まってしまい、逃げられないように腕を力強く握られてしまう。
「……な、んで逃げてんだよ、ふざけんじゃねえぞ。」
微かに、痩せて見える彼に刹那目を向けるが、すぐに視線を逸らし、見ないようにした。もう、これ以上は、傷つきたくない。誰よりも、春くんにはお腹の中にいる子を否定されたくなかった。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時