31 募る不安 ページ32
溜まっていた有休を消化する目的も含め、会社を休み、産婦人科へ受診する事にした。
待合室には、やはり妊婦が多い。私もいずれこうなるかもしれない、と思ったら少しだけ怖くなった。
自分の体内に私ともう1人の命を自分自身で守らなくてはいけなくなるのだから。
初めて受診する私は、軽いアンケートに答えて自分の名前が呼ばれるのを椅子に座って待っていた。
鼓動は速く突き動かされ、結果がどうなっているのか早く知りたいと思えば、知りたくもないと思っている私がいる。
「東雲Aさん。」
自分の名前が呼ばれ、椅子から立ち上がる。案内され、促されるまま私は歩みを進めた。
事前に記入したアンケートを眺めながら、医師は話を進めていき、早速エコーを撮ることになった。
「これ、分かるかな。」
写真を現像してくれた医師がトントン、と写真を指さして教えてくれる。
「まだ小さいけれど、新しい命が宿ってますよ。おめでとうございます。」
……私のお腹の中に、赤ちゃんがいる。その事実をまだ受け入れられそうになくて、不安が募った。
本来なら、喜ばしい事で、おめでたい事なのに。
まだ、素直に嬉しいと心から喜べない自分に嫌気がさしてしまいそうになる。
「あの……堕ろす事も出来るんですよね?」
第一声で、こんな事を聞くなんて最低だ。そう、自覚していながらも、逃げる場所を探そうとしているみたいに尋ねてしまった。
「悩む時間は十分にあります。でも、大事な事なのでパートナーとしっかり話し合った方がお互いの為だと思いますよ。」
診察は終わり、重たい足取りで自宅へと帰宅することになる。スマホを見ても、春くんからの連絡は一切無し。
電車に揺られて、移り変わっていく景色をぼんやりと眺めて、自宅の最寄り駅に着けば、とぼとぼ歩いて帰って行った。
帰宅しても、彼は居るはずもなくて。ご飯の支度しないと、とか洗濯物やらないと、なんて頭では順序立てて家事をしようとしているのに。
現実逃避をしたいからなのか身体が思うように動いてくれない。……そんなの、ただの言い訳でしかないのにね。
理性がまだまともに働いてくれているお陰でノロノロと鈍い動きではあるが、家事をした。
扉の開く音に、思わず身を震わせてしまった。彼が帰ってきたからには、ちゃんと結果報告をしなくてはいけない。
「春くん、私……妊娠してた。」
喜んでくれる、心のどこかでそう期待してた。でも。
「本当に俺の子か?」
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時