key(はじやふ) (ページ8)

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後日談 1 ページ8

あの夢のような夜から数週間が経った。あの日から暫くは、はじめくんの仕事が立て込んでいて、今までの毎日と何ら変わりは無かった。
それらしいことと言えば、
彼の手が空いている合間に、こっそりとメッセージのやり取りをしたり、ふたりきりになったタイミングで、少しくっついてみたり。
その一瞬に、より幸せ感を感じていた。

今日も、企画の合間にオレとはじめくんが留守番という絶好のタイミングがあった。
案の定、甘えたがりのはじめくんは今がチャンスと言わんばかりにすり寄ってきて、キスをしてきた。

「ようへいくん～、好きだよお～」
「ふふふふ、はじめくんは本当にバブパブすんのが好きなんすねぇ」
「好きー」

いつかの動画内で議題に上がった、"理想のお嫁さん像"の時、彼は甘えるのが好きと言っていた。
オレは基本的にそうされるのは苦手だけど、はじめくんは全くの別枠。
寧ろ、彼のこんな姿を独占できるなんて、ありがたいとすら思える。鼻血が出そうになるくらいの至福。

「あの、もっと、キスして欲しい、デス」
「もちろんもちろん！」

対して、オレはデレることに全くもって慣れていないので、どうしても一言一言に力が入ってしまう。それでも、嬉しそうに願いを聞いてくれる彼に更にハマっていくのだった。

その時。

「ええええええ！？」

不覚。
きっと、留守番しているオレたちを驚かそうと静かに帰ってきたのであろう。
滅多に驚かないたなっちの大きな声が部屋に響き渡った。余りの出来事に前にバランスを崩したはじめくんが、オレに覆いかぶさるように倒れ込んできて、床に押し倒されたような状態になった。

「なーにやってんすかー！」

怒り？が混じったような声を張り上げて、いかがわしい体制のオレたちの元へ来る。
彼の後ろにはだいちくんも居て、驚きのあまり声が出ないようであった。

はじめくんはたなっちを見上げて、

「俺とようへいくんはこう言う関係になったんよ」

さも当たり前のように、オレをゆっくり起こして頬にキス。これを素でして良いのははじめくんだけだと断言しておく。
そして皆さんごめんなさい、僕幸せです。

「…だいちくん…」

たなっちは、今度は声のボリュームを落として、後ろであんぐりしているだいちくんに視線をやる。
そして、ドンマイと言わんばかりにだいちくんの肩に手をやった。