ほくほく短編集。2 (ページ12)

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あの日から、松村くんとは割と仲良くなれた気がする。

今だって、こうして昼飯一緒に食ってるわけだし。

「お前さ、ほんと頭いいよな。

さっきのびっくりしたんだけど。」

さっきの授業が終わったあと、松村くんが先生から何かを受け取っていた。

それを見ると、中は文字びっしりの教材だった。

望んで貰ってるらしい。

俺、賢くてもそんなん絶対しないべ。

『賢くないよ。』

「羨ましいわ」

そう言うと、彼は黙り込んでしまった。

そして、空を見上げて一呼吸ついたあと、静かに呟いた。

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『…俺は君が羨ましい』

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残りのパンを口に入れ、本を開く松村くん。

何故か、触れるなって言われたようで。

理由を聞くことが出来なかった。

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｢やべ、課題忘れた｣

明日提出のワークを学校に忘れたのに気づいたのは、家に帰ってから。

多少の面倒くささを感じながら、また学校へ戻ることにした。

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学校に着いた。
もう6時を過ぎていて人なんて、清掃員のおじさんくらい。

教室のドアを開けると、人影があった。

薄暗くてよく分からない。

少し近寄れば、机に突っ伏した松村くんがいた。

綺麗な顔。

男の俺でもそう思ってしまうのは、松村くんが悪い。

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『んんっ……やめ、』

突然もごもごと喋りだし、苦しそうな顔をした。

何か悪い夢でも見たのだろうか。

それをどうにも放っておけなくて。

｢……松村くん、大丈夫？｣

起こしてしまった。

『はっ……俺、寝てた………』

｢ごめん、起こして、｣

『あ、いや、』

しどろもどろする松村くんをよそ目に、机の中から課題を出した。

「じゃ、俺帰るわ。……暗くなってきたし早く帰れよ」

それだけ言ってドアを開けた。
時計の針はちょうど7時を指している。

後ろから小さい声が聞こえた。

『あ、ありがと……、』

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ごにょごにょ喋ってるからよく聞こえないけど、全然嫌な気はしなかった。

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