第34話 ページ42
また別の女優は眉をひそめて云った。
「脅迫ぅ?」
衣装なのだろう、白銀に染められた
大きな
化粧の手入れをしながら云った。
「正直ねぇ、そんなの"こっち"の話に
決まってると思うわぁ」
「こっち?」
福沢が、眉間に皺を寄せながら聞き返す。
「これよ、これ」
そう云って女優は小指を立てて振ってみせた
「狭い業界でしょ? くっついたり離れたりが
多くてねぇ。新人食べちゃったとか、
別れて劇団辞めたとか......殺したい
相手の一人や二人いるのが普通なんじゃない?」
貴女は殺したい相手がいるのか、と
福沢は問いかけたが
鬘の女優はうふふ、と答えてはぐらかした。
痴情の
脅して怯えさせる程度が目的の
脅迫であればいいが。
福沢は今朝の事件のことを思い出していた。
そこにいる織田
暗殺者によって今回の事件が実行されるなら、
観客と乱歩と自分、全員を"一人"で
守り抜く自身は福沢にはない。
全員に話を聞いて楽屋を辞した。
廊下を歩きながら、福沢は考える。
一対一の決闘ならば、異能者であっても
福沢が後れを取ることはない。
幾ら、福沢が腕が立つ用心棒でも
一度に守れる人数には限りがある。
福沢は、自分の少し後ろを乱歩と共に歩く
織田をちらりと見た。
殺しを辞めた暗殺者。
福沢は、今朝の事件からずっと考えていた。
何故、あれ程裏社会で名を馳せていた
腕利きの暗殺者が急に殺しを辞めたのか
ビルの警備員や、あの秘書を殺すことなど
赤子の手をひねるより簡単だったはずだ
然し、大人しく警備員に捕まり
秘書の動きを封じ、軍警に引渡した。
どれだけ考えても答えは出ないままだった。
ラッキーアイテム
麦わら帽子
91人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
読書日和(プロフ) - あい様、教えて下さりありがとうございます( > _ < )修正しておきました (2019年3月9日 7時) (レス) id: 074c26cf03 (このIDを非表示/違反報告)
あい - あの、19話と20話が同じなんですけど。 (2019年3月8日 21時) (レス) id: ba4bf15776 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:読書日和 | 作成日時:2019年2月19日 21時