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*
「じゃ、失礼します。」
「あ、照、待って。」
あの頃と変わらない俺の右腕を掴む細くて長い綺麗な指。
俺は、あの頃と違って、随分筋肉もついて、ちょっとやそっとじゃよろけたりしないはずなのに。
なんで、軽く引っ張られただけで、
いとも簡単にこの人の腕の中に納まってしまうのだろう。
昔からそうだ。
この人の体の中にはきっと磁石みたいなものがあって。
だから、俺は・・・。いつも引き寄せられる。
「照、俺、その・・・。」
何か、言いたげなその声なんて、無視してしまえばいいのに。
抱き寄せられたって、この腕をほどいてしまえばいいのに。
あの頃のあの時と一緒で、固まったまま俺は動けない。
「・・・あっ、照、ごめん。ちょっとだけ、じっとしといて。」
耳元で小さく囁かれた声は魔法の言葉なんかじゃない。
それなのに、あの頃と同じでやっぱり俺は動けない。
「んっ!!」
久しぶりに耳を這っていく舌のこそばゆい感触。
体に電流が走ったような感覚に、力が入って、余計動けなくなる。
そんな俺とは正反対に、
コロコロとあなたの舌で転がされ動く、左耳のピアス。
それは、「一緒に開けよう、お揃いの付けよう」と、
あなたが開けた、一生消えない、あなたの印。
記憶(じかん)が一気に巻き戻る。
忘れたことなんて、なかったけれど。
初めて、こんな風に抱きしめられた時。
いつもとは違う声色。
見たことのない、表情。
自分の意思とは関係なく、熱くなっていく身体。
こんなことされるなって思ってもみなくて。
俺、怖くて動けなかった。
でも、大人になった、今ならわかる。
ショックだったから怖くて動けなかったんじゃないって。
拒否してしまえば、
あなたに嫌われるかもしれない。
あなたを傷つけてしまうかもしれない。
あなたを失ってしまうかもしれないと、
それが怖くて、動けなかったんだって。
「ごめんね」と泣きそうな顔をしながら、
俺を抱いていた頃の幼さの残るあなたの顔が頭をよぎった。
あの時、大好きな笑顔が歪んで。
それなのに、俺は『大丈夫』だとも、『嫌だ』とも言わなかった。
なにが正解なんて、わからなくて。
苦しくなって、離して欲しくて。
でも、離して欲しくなくて。
いつの間にか俺の手は、ぎゅっと白衣の胸元を握ってた。
あの頃とは違うんだから。
何か。
何か言わなきゃ。
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☆(プロフ) - ありがとうございます。楽しみにしてます。ゆり組もいいですよね!地雷は無いのでどの話も大好きです。それと、申し訳ないのですがR-snowのパスワード教えていただけないでしょうか。読んでみたいのですが、中々解けなくて。教えてくださると嬉しいです。お願いします。 (2020年3月5日 12時) (レス) id: e1dc0757dd (このIDを非表示/違反報告)
ひびた。(プロフ) - ☆さん» お褒めの言葉、ありがとうございます^_^ ゆり組贔屓気味ではありますが、dtskも大好きなのでそう言ってもらえて嬉しいです。ノロノロ更新ですが、おひまなときにでもまた読みにいらしてください(*゚▽゚*) (2020年3月4日 22時) (レス) id: 5a12b48840 (このIDを非表示/違反報告)
ひびた。(プロフ) - ルリさん» iwさん受けは最高です!!本当、いいですよね!!私もmmiw大好きです(*^ω^*)高身長同士の並び、素敵!! (2020年3月4日 22時) (レス) id: 5a12b48840 (このIDを非表示/違反報告)
ひびた。(プロフ) - みわみるさん» 確かに、日本語の意味がよくわからないことになってますね。ご指摘いただくまで気づきませんでした(^^;;一文字目というのは頭文字ということが言いたかったのです。わかりにくく書いてしまい、大変失礼いたしましたm(_ _)m (2020年3月4日 22時) (レス) id: 5a12b48840 (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - この作品が大好きです!特に、だてさくの作品が大好きです。これからも更新楽しみにしてます。 (2020年3月2日 19時) (レス) id: e1dc0757dd (このIDを非表示/違反報告)
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