エ イ ト も の が た り

渋谷家 ページ28

信五said
いよいよ明日退院できる！よっしゃ！
明日は家でゆっくり過ごすけど明後日はユニバやで！
めっちゃ久々やわ…
病気になってから旅行行ってなかったもんな。

亮と忠義も旅行したかったやろに
『行ってきてええで』って言っても
『しんちゃ行かへんならりょーも行かへん！』
『たぁも！みんな一緒！』
って言って行こうとしなかった。
嬉しかったけどすごく申し訳なかった。

すばるは高校になったら
バンドをもっと本格的にやるらしいし
その後高校卒業したら大阪を離れて
東京の大学で音楽をしっかり勉強すんねんて。

やから俺らがみんなで旅行に行ける期間は
決まってんねん。

やのに…去年の冬、俺は白血病になった。
急に見覚えのないアザができ始めたけど
別に気にしてなかった。

ある日着替えてるところにすばるが来た。

す｢ヒナ足どうしてん？アザだらけやん。｣

信｢ぶつけたりした覚えないんやけど
めっちゃ最近できんねん。
手にもいっぱい出来るしほんまなんやねんコレ。｣

す｢ちょっとても見せて。｣

信｢ええよ。ほら。｣

す｢うわ。何やねんこれ。絶対大丈夫とちゃうやろ。
今度1回病院行ってきたらええんちゃうか？
他になんかないん？ここが痛いとか。｣

信｢せやな…強いていえば最近めっちゃ膝痛いわ。
多分サッカーで
新しいトレーニング始めたからやと思うけど。｣

す｢他にはもうない？｣

信｢今んとこそんだけやな。｣

そんな会話で俺はただ事やないのかもしれない
と思うようになった。

すばるsaid
俺は…ヒナが病気になる前
なんかおかしいって思ってたのに
結局何も出来なかった。

ヒナに異変が起き始めてしばらく経った頃
怠い言うて学校早退してきたことがあった。
そのときに熱測ったら微熱やった。
それからずっと微熱が続いて
さすがにアカンやろって病院に行った。
そしたら色んな検査して白血病やって分かった。

俺は正直イマイチよう分からんかった。
病名は聞いた事あったけどどんなんか知らんかったし
大変なんやろうなって思ってたけど
思ってた以上に治療が大変そうで
どんどん弱って細くなっていく
ヒナを見てるのが辛かった。
本人も心配させないように明るく振る舞うけど
逆にそれが辛かった。

ここは親でもなく俺がヒナの支えになろうと思った。
亮と忠義が産まれるまではずっと2人で一緒にいた。
やからこそ2人にしかわからんようなことも
きっとあるはずや、って信じてヒナに寄り添った。
力になれてたんかはわからんけど。

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