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九章『館に住まう神様へのお披露目会』 ページ36

*

「やはり、女人は支度に時間がかかるものだな」

――今。
朱ノ姫によって着替えさせてもらった私は、大鵬の部屋にいた。
凄く広い部屋だった。
入口の襖を開いた先にある床は、ぴかぴかに磨きあげられた焦げ茶色の板。
そこに、柔らかな赤い敷物が敷き詰められていて。
その奥には、12段の階段。……真上には、高い背もたれのついた、黒く輝く石の台座。
金色で、鳥の模様が描かれている、凄く豪奢な椅子。
そこに、大鵬は鎮座していた。

(……やっぱり、神様なんだ)

そう思った。
階段の下から見上げた大鵬は、お腹の辺りで手を組んで、堂々と背もたれに寄りかかっていた。とても威厳のある姿。
椅子の後ろ、左側に、老師父様がにこやかな笑顔で、ひっそりと控えていた。

(……あの方は?)

椅子の斜め右の位置に、知らない少年の姿があった。
顔は程よく日焼けしていて、とても健康そう。
薄いこげ茶……狐色をした前髪は、眉の辺りで無造作に切り揃えられていた。肩につくかつかないかの位置まである後ろ髪は、くせ毛なのか、外向きに跳ねている。
白袴を履いて、瑠璃色の袍を纏った少年は、袖を合わせて少し顔を俯けていた。
金色で、釣り目なんだけど、すごく大きいな瞳がとても神秘的。

(やっぱり、あの人も神様だよね?)

あんまりじろじろ見るのも失礼なので、さっと顔をそらして、階段の上の方々にお辞儀をする形をとった。
少しだけ見ていたその間に、なんとなく、少年から睨まれた気もしたから。

そうこうしているうちに、朱ノ姫様が喋り出す。

「お主の願いどおり、Aの支度をしたのだ。せっかくだから、思いっきり飾り立ててやったぞ! 多少、時間がかかったのは許せ、大鵬殿」

「……朱のばばぁが張り切っても、子どもは子どもだ」

快活で張りのある声……だけど、妙に刺々しい。
この館に来て、初めて聞くもの。

「青蘭(せいらん)……。お主、わらわに喧嘩を吹っ掛けたいのかの?」

「ふんっ。大鵬様をお待たせしておいて、偉そうに……」

(あの金色の目の少年が、青蘭様……)

私はお辞儀したままだから、表情は見えないけれど。
着替える前に噂で聞いた、神様の名前を思い出していた。
――青蘭(せいらん)様。
朱ノ姫と仲が悪いのだろうか。
心なしか、舌打ちまで聞こえた気がする。

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます!  誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時

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