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「……え?」
「我に喰われるのは構わぬが、集落の者に雨を……と、お前は叫んでいただろう?」
「あ……」
あのときは食べられるのを覚悟して、必死で叫んだ。
大鵬は、そんな私の願いをちゃんと聞いていてくれたんだ。
(……なんだろう)
もの凄く嬉しくなった。
心がぽかぽかあったかい。ただ大鵬が、私の叫びを聞いていてくれていただけなのに。
「うん!」
私は笑顔で頷いた。
「今から、我は花嫁殿の願いを叶えるぞ!」
そういって、大鵬は私を床に降ろした。
それから、
「朱(あけ)! Aの支度を頼む」
と朱姫に命令する。
朱姫様はやれやれとため息をつきつつも、優しい笑顔。
「無論じゃ。本来のわらわの役割は、花嫁殿の世話役じゃからの。やっと本領が発揮できるというものじゃ!」
「ああ! Aにぴったりの衣装を用意してやれ!! 流石にその白衣で、雨ノ神に挨拶させるわけにはいくまいからな!」
「あたりまえじゃ! わらわがこの娘を、見事な「花嫁」にしてみせようぞ!」
「うむ。期待してるぞ!」
朱姫様と、大鵬は、本当に楽しそうに、私を見ながら話していた。
いったい私はこれからどうなってしまうのか。
少しだけ不安があったけど。……楽しそうな二人の様子から、たぶん悪いようにはされないだろう。なんとなくだけど、そう思うことができた。
*
「では、まずはAを花嫁殿の部屋に案内するとするかのう!」
朱姫様が上機嫌に叫んだ。
「あぁ。支度ができたら、我の部屋に連れて来い。そのまま雨ノ神を呼びに行く用意をしておくからな!」
大鵬も張り切って叫んでいた。
そこに、老師父様が口をはさんだ。
「ほっほっほ。お二方とも張り切っている様子じゃが、一つ良いかの?」
「老、何だ?」
大鵬が急にどうした! と老人を見た。
「一つ聞きたいのじゃが、A殿の守りはどうするつもりじゃ?」
「老師父殿、突然何を言い出すのかと思えば……そんなの決まっておろう? のう? 大鵬殿?」
朱姫様が怪訝そうに老人を見て、それから大鵬へと視線を移す。
「……そうだな……」
「うん? どうした? 大鵬殿。通常、花嫁殿の術の教育係は老師父殿。その他の心得は全てわらわの担当であろう? ……そこには守り役(もりやく)も含まれておったろう?」
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時