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「えーと。それは、私だけは操る必要があるから『真名』を下さった、ということですか?」
「……な!」
誤解だ! と、大鵬が叫び出す。
朱姫様はやれやれと首を振って苦笑する。
そこで老師父様が、
「ほっほっほ。操りはせぬよ。ただ、花嫁殿にはより、儂らに近しい存在になってもらう必要があるのじゃよ」
真っ白なお髭を撫でながら、説明を引き継いだ。
「近しい……存在、ですか?」
「そうじゃ。儂らは大鵬殿に『真名』を差し出す代わりに、大鵬殿の庇護も受けておる」
「庇護……ですか?」
「わらわ達にとって、『真名』を差し出すというのはのう……、己の意思を差し出す行為に他ならぬ。……つまりは、お主ら人が『魂』と呼ぶものを差し出す、と言えば分かりやすいかのぅ? ……それを差し出す代わりに、大鵬殿もわらわ達を全力で守る。そういう契約じゃ」
朱姫様がつけたした。
「えっと……じゃあ、私も大鵬に命を差し出すけれど、食べられるまでは守ってくれる……その約束のしるしに『真名』をくれたってことですか?」
「お主……いい加減、「食べられる」から離れてはどうじゃ?」
呆れ気味の朱姫様に、
「ですが、大鵬は人喰いの神様なのですよね?」
真面目に聞いた。
「……もう、それでよいかのう?」
そう、大鵬に向かって朱姫様がいうと……。
「よくないぞ!」
大鵬が叫んで、私を朱姫様の腕から奪い返した。
「いいか! 我はAを喰らったりはせん! ただ、Aの神通力を分け与えてもらう。……その時、我とAの魂の繋がりが必要なのだ!」
「魂の繋がり?」
「そうだ! そのための『真名』だ!!」
あまりに必死な大鵬がおかしくて。
少し笑いそうになるのをこらえる。……供物の花嫁相手に、必死に説明しようとしてくれる、その優しさが嬉しいと思った。
「我は『真名』を預かることで、その者の魂と呼応する。先ほど、Aのなかにも我の力が入ったのが分かったはずだ」
そう言われて。
さきほどの黒銀の光と、……その温かさを思い出した。
「さっきの光?」
「そうだ!」
大鵬が深く頷く。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時