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「そうだ! だが、ただ力があるだけではだめなのだ!」

「……?」

首を傾げた私を、少しだけ降ろしてくれる。
ちょうど、私の顔が、大鵬の顔と同じ高さになった。……視線がまっすぐぶつかった。
すると。
にかっと笑った彼が言う。

「我にその力を捧げる……その契約の証しが必要なのだ!」

「契約の……証し?」

「そうだ」

どうだ! とばかりに頷かれたけど、やっぱり良く分からない。
契約の証しとは何なのだろう?
――だって。

「でも私、もとから大鵬に食べられるつもりでここにきてるよ? 花嫁ってそういうものでしょう?」

「……」

大鵬が目をぱちくりさせた。

「はっはっは! 大鵬殿。この娘は、筋金入りの花嫁教育を受けたようじゃからのぅ? お主が今かぶりついたとしても、……恐らく受け入れるぞ?」

「……朱(あけ)。我はそのようなこと……」

「そうじゃ! お主はせぬ!」

そういって、朱姫様が私の体を大鵬から奪い取った。
大人の女の人の手。大鵬より柔らかな腕が、私を抱える。

「朱! 何をする……!」

「大鵬殿に説明をまかせておっては、日が暮れてしまうであろう?」

抗議してきた大鵬を一蹴して、朱姫様が優しい声で話してくださる。
まるで子守唄のようにして。ゆっくりと。

「A、よく聞け。……この屋敷の者は皆(みな)、大鵬殿に『真名』を預けておる。何故かわかるか?」

「……えっと、大鵬に操られてもいいと思っているのでしょうか?」

朱姫様が自嘲気味に笑う。
それから、軽くため息を吐いた。

「それもあるの。……だが、それだけではない」

「……?」

「大鵬殿は、わらわ達の『真名』を知っておっても、決して操らぬ」

「どういうことですか?」

「大鵬殿は操ることは嫌うお方でな」

「……でも、それじゃあやっぱり、『真名』は必要ないのではないのですか?」

「それが、そうもいかぬでのう」

「……どういうことですか?」

「花嫁殿は、大鵬殿に力を与える。その力が、お主ら人が『神通力』と呼ぶものじゃ」

「……」

「大鵬殿はAから、Aの神通力を得る。……そこで『真名』が必要になるのじゃ!」

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます!  誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時

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