【wrwrd!】短編集

→続 ページ10

すでにバレている気持ちを隠しても仕方ないし、言ってしまったとしてグルッペンは誰かに言いふらすような愚かな男ではないと分かっている。
素直に認めた。

「そうよ。諦められなくて未練たらしくここに来たの。シッマを見てたこの屋上に。」

放課後はいつもここからグラウンドを眺めていた。
犬のように元気にボールを追いかけ回すシッマの姿を見たくて。
彼らが付き合い始めた時も一人、この屋上で泣いた。
季節外れのこの水色に顔を埋めて。

「でももう今日で終わり。やっと諦めがついたの、一発逆転もなし。」
「一発逆転なんか狙ってなかったくせに。」
「どちらも大切な友人だもの。壊すなんて無理。」

誰にも言った事のなかった気持ちを胸から出せば意外とすっきりした気持ちになった。
死ぬつもりなんて微塵もなかったけど、極悪の生徒会長に救われてしまったのは事実だ。

「ありがとね総統様、すっきりしたわ。このマフラーもやっと捨てられる。」

感謝の気持ちを込めて総統と呼ぶと、なんとも言えない微妙な顔をする。

「やはりお前がそう呼ぶと違和感しかないな。」
「あんたが呼べって言ったんでしょ。」
「総統と呼ぶからには献上品の一つでも寄こすんだな。今日何の日か分かってるのか？」
「バレンタインでしょ、それくらい知ってるっつーの。生憎渡す相手もいませんし何も持ってないわよ。大体たくさん貰ってるんでしょ、あんたの甘党は校内で知らない奴なんていないでしょ。」

そう、集会で自分へのチョコは生徒会室に届けるかトントンに渡せだなんて言う生徒会長どこの学校を探してもうちくらいだ。
トントンが可哀相じゃない、あいつだってモテるだろうに。

「お前からのが欲しいんや。」
「ははっまるで告白みたいだよそれ。」
「お前知ってるか？ここ生徒会室からよく見えるんだゾ。」
「は？」
「全生徒の好きな奴なんて把握できるわけないだろ、好きな女の視線の先なんか嫌でも目に付く。極めつけにそんな水色のマフラーなんか持ってれば認めざるを得ん。」

まるでずっと見てたと言わんばかりの台詞に時が止まったように立ちつくした。

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