→続 ページ35
「しっかり掴まっとけよ?」
バイクの後ろに跨り、ゾムの腰に手を巻き付かせたところでゾムはそう言って回した腕を一度触った。
生まれて初めて乗るバイクだし、細いのに固いゾムの腰にピッタリとくっついた事で心臓はバクバク
と大暴れしていた。
「ひゃあ〜〜!気持ちいい〜〜〜!!!」
まるでジェットコースターに乗ってるような感覚。
素早く通りすぎてゆく景色、頬を撫でる風は夏の暑さを感じさせない気持ち良さ。
それでも少しも怖くないのは多分ゾムがいるから。
ゾムのお腹にある手をたまにトントンと突かれて、顔を少し横にズラせばゾムが片手を前に突き刺す。
ゾムの指先に視線を合わせれば、面白い看板だったり、動物がいたり、綺麗な景色があったり、言葉なんか要らなかった。
私が笑うように、表情なんか見えなくてもゾムも笑ってるのを感じた。
長いトンネルを抜ける前、再度腕を突かれる。
今度は指を指さなかった。
見て欲しいものはトンネルの先にあると私も分かっていた。
視界が白く輝く。
急激な光に目を細める、視界の先に広がったのは透き通るような青、青、青。
「海だーーー!!」
白い砂浜に光が反射してキラキラと輝く青い水面。
雲一つない高い青空、空と海の境が分からなくなりそうなほど。
風が海の匂いを運んでくる。
興奮の余り片腕を突き出してしまった私に、ゾムは腰に回したもう片方の腕を片手でしっかりと支えていた。
海を通り過ぎ、山道を上っていく。
左右に伸びる木々たちがまるでトンネルみたい。
木陰になった道は先ほどよりも涼しくて、心なしか空気も澄んでおいしい気がする。
ゾムがまた私の腕をつつくと指差す方向には看板があった。
”この先メロディロード”そう書かれた看板を過ぎると少しスピードが緩む。
少しボコボコとした道路をゆっくり進むと耳に届くメロディ。
「あるこ〜あるこ〜わたしはげんき〜♪」
頭を揺らしながら道路の奏でるメロディと共に歌う。
ゾムの体が少し震えて、可笑しそうに笑ってるのが分かった。
メロディロードを抜け少し走ると、視界が一気に広がる。
突き抜けるような青空、眼下に見える町と海と木々たち。
山の頂上には展望台らしきものがあり、ゾムはゆっくりとスピードを落としバイクを停めた。
「すごいすごい!こんなとこあったんだ!」
「いい景色やろ?」
「うん、最高!」
ゾムに手を借りてバイクを降り、柵に駆け寄る。
目の前に広がる景色は今まで見たどの景色より綺麗だった。
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ひとちん(プロフ) - NORTHさん» NORTHさんコメントありがとうございます!初めてのギャグがもはや黒歴史になっていたところでそのお言葉…嬉しいです…!よければ短編集2の方もどうぞよろしくお願いします!あそこまでぶっ飛んだギャグはありませんがww (2017年10月29日 19時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
NORTH(プロフ) - 突然ですが初コメ失礼します!ひとらんの回の主人公が面白すぎました…あれですね、貴方様はギャグセンもあるんですね!すごいです!リスペクトです!頑張ってください!(語彙が…無い!) (2017年10月29日 19時) (レス) id: ecb1a421ae (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - ひとちんさん» こちらこそ(*´▽`*)これからもよろしくお願いいたします! (2017年10月8日 16時) (レス) id: cb678ab533 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - ヒメ*さん» ヒメ*さんコメントありがとうございます!最近更新サボってますが頑張って更新するので気長にお待ちいただければと思います!感想下さってありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2017年9月10日 18時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - こんにちは!いつも読んでいます!『総統の愛した甘味屋さん』を読ませていただきました!ひとちん様の書く小説は本当に素晴らしいな、と心から思いました!応援しています!これからも頑張って下さい(*^O^*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
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