→続 ページ26
一人きりの社内で机に突っ伏した。
もっと素直になれたらいいのに…いつだって口から出るのは可愛くない言葉ばかりだ。
「並んで歩きたかったな…。」
小声で呟いたつもりだったのに無人の社内には割と響いてしまった。
思ったよりもはっきりと自分の耳にも届いてしまった声に一段と肩が落ちた。
はぁと溜息をつくと机のスマホがピコンとメッセージの着信を告げた。
顔だけ上げて画面上を見ると宛先に写る”トントン”の文字に目を開く。
え、待って、もしかして急用で帰るとかじゃないよね…。
ガバリと体を起こして指で画面をなぞると”屋上に集合”と書かれていた。
とりあえず帰ってはいないみたいでほっとする。
まぁトントンに限って仕事押し付けて帰っちゃうなんて事あるわけないか。
スマホをポケットに突っ込んで部署を出る。
屋上に一体何の用事があるのだろうか。
まさか社畜に嫌気がさして飛び降りでも考えてるんじゃないでしょうね…。
どうせ望みのない恋なら一緒に夜の街に飛び降りるのも悪くないかもね、と落ち込んだ気持ちは悪い思考へと進んでいく。
屋上の扉を開けるとじめっとした空気が肌に纏わりついた。
トントンは屋上の柵に腕を乗せて夜の空を見上げていた。
「トントン、どうしたの?」
「お、来たか。」
振り向いたトントンはニカっと笑ってコンビニの袋から取り出したものを渡してきた。
「え、これビールじゃん!仕事中に飲んでるの!?」
「どうせもう俺とお前しかおらんやん、こんな時間まで残業しとるしこれくらい許されるやろ。」
「んーそれもそうか。」
二人で悪い顔をしながら笑ってプルタブを開ける。
「「乾杯!」」
ガコンと缶をぶつけてから、口に流し込む。
シュワっとした冷たいビールが喉を通ると、ジメジメした体が冷えるのが分かった。
「うっま〜会社の屋上でビールって贅沢だね!」
「やな。」
というかこの状況が贅沢だわ。
トントンと二人で屋上にいるなんて残業した甲斐があるってもんよ。
思わずニヤけてしまうと、その顔をトントンが見ていた。
「元気出たみたいやな。」
「え?」
「残業でデートの予定が潰れて落ち込んどったやろ。さっき聞こえてしまったわ。」
もしかして、並んで歩きたかったという呟きを勘違いしてるのか。
アレは彼氏とではなくトントンとって意味なんだけど。
「ちがっ…!」
否定しようとした言葉はドーンという大きな音にかき消された。
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ひとちん(プロフ) - NORTHさん» NORTHさんコメントありがとうございます!初めてのギャグがもはや黒歴史になっていたところでそのお言葉…嬉しいです…!よければ短編集2の方もどうぞよろしくお願いします!あそこまでぶっ飛んだギャグはありませんがww (2017年10月29日 19時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
NORTH(プロフ) - 突然ですが初コメ失礼します!ひとらんの回の主人公が面白すぎました…あれですね、貴方様はギャグセンもあるんですね!すごいです!リスペクトです!頑張ってください!(語彙が…無い!) (2017年10月29日 19時) (レス) id: ecb1a421ae (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - ひとちんさん» こちらこそ(*´▽`*)これからもよろしくお願いいたします! (2017年10月8日 16時) (レス) id: cb678ab533 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - ヒメ*さん» ヒメ*さんコメントありがとうございます!最近更新サボってますが頑張って更新するので気長にお待ちいただければと思います!感想下さってありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2017年9月10日 18時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - こんにちは!いつも読んでいます!『総統の愛した甘味屋さん』を読ませていただきました!ひとちん様の書く小説は本当に素晴らしいな、と心から思いました!応援しています!これからも頑張って下さい(*^O^*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
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