【wrwrd!】短編集

→続 ページ16

「あぁらんらん様。愛しいお方。早くあなたと結ばれて庭付き一戸建ての家で少しヤンチャな男の子とおませな女の子を産んで育てたい…！」
「想像が具体的でキモい。あと長い、そしてキモい。」

金髪の悪魔ことグルッペンに運命の出会いを、それはもう盛大に少しミュージカル風にして伝えた。
涙なくしては語れない出会いに、恐らく人の心を母親の胎内に忘れてきたこの悪魔でも胸を打たれたことだろうと思ったが、奴の口から出たのはキモいという罵倒だった。

「こんな奴に目をつけられるとは、憐れひとらん。」
「は！？あんたらんらん様知ってるの！？」
「お前よりはな。」
「何よそれ、ちょっと生意気なんじゃない？とりあえずらんらん様の身長・体重・誕生日・トランクス派かボクサー派か答えなさいよ。」
「質問がキモい。」

くっ…こいつ喋る気ないな…。
よかろう、ゾっとするが貴様と知り合って１０年…お前の弱点などお見通しだ！

「グルッペンくん、ここにボナペティの超限定クッキーがありますの。」
「まぁ座れよ。」

なんというチョロさ…悪魔の通り名が泣くぞ。

「ひとらんはなぁ…動物が好きやな。」
「は？あんたらんらん様のこと実は対して知らないんじゃないの？そのクッキー返しなさいよ。」
「待て待て、つまりは動物好きの女に興味を持つはずや。」
「なっ！なるほど！あんた賢いわね！」

グルッペン…恐ろしい男！
悪魔的発想力に勝利を確信せざるを得ないわ！

「なら私が犬の散歩でもしてる所をらんらん様が目撃する、なんて動物好きな女の子なんだ！とぅんく…こうなるわけね！」
「大分ぶっ飛んでるな。」
「イケる…！これはイケるわよグルッペン！」

自らの完璧すぎる作戦に握った拳が震える。
しかし一つ重大な問題に気付いてしまった。

「グルッペン犬飼ってたっけ？」
「飼ってないな。」
「私もよ、どうするの？この作戦にペットという存在は最重要アイテムよ。」
「野犬でも捕まえてこい、お前ならやれる。」
「か弱い女の子にそんな事できるわけないでしょ！ちょっとあんた使い魔の一匹でも召喚してみせなさいよ！最悪犬に近ければそれでいいから！」
「できるわけねぇだろ。」
「あんたそれでも悪魔と呼ばれる男なの！？」
「それ言い出したのお前だろ。」

くっそ使えねぇなこいつ！
机に頭をガツガツぶつけながらどうにか打開策を考えると、ある名案が浮かんだ。

「そうだ…！あいつがいた…！」

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