【wrwrd!】短編集

→続 ページ14

「あんたがグルさんの傍うろちょろしとったららいつまで経っても諦めへんやろ？俺のアプローチにも気付かんし。やからはよ振られて俺の事見てくださいよ。」

真剣な表情で見下される。
私は言われた言葉の意味を考えた。

「頭の弱いA先輩でもさすがにこの意味分かるでしょ？」

そう言って優しく頭を叩いてから生徒会室に戻ったトントン。
いくら私でも気付いてしまった、これは告白だ。
ふらふらした足取りで歩いた帰り道はトントンの事で頭がいっぱいだった。









あれから半年。
私は見事に志望大学に合格して卒業の日を迎えた。

「卒業おめでとうございます。」
「ありがとう、グルッペンくん。」

後輩たちと別れを惜しむ同級生たちが集まる校庭でかけられた声。
振り向けばそこにはずっと想いを寄せた後輩がいた。
卒業という事もあり大きくなった気持ち。
聞きたかった言葉がするりと口から出た。

「私がグルッペンくんの事好きだったの気付いてたでしょ？」
「へぇそうだったんですか、勿体ない事しましたね。」
「ふふっ嘘つき。」

やっぱり。
鋭い彼が気づいてないわけがなかった。
彼に夢中だった時はそんな事にも気付かなかった自分を思い出すと笑いが零れる。
今こんなにも穏やかな気持ちでグルッペンくんと笑って話せるのも、きっと彼のおかげ。

「人の彼女を誑かすのやめてもらえますかねぇ。」

目の前に現れた大きな背中。
まんまと私の心を攫ってしまった生意気な後輩。

「ちゃんと捕まえてないと奪っちまうゾ。」
「やかましいわ、あんたに言われんでも分かっとる。」

ぎゅっと繋がれる大きな手。
なんだかんだいつも私を助けてくれたのはこの手だった。

「もういいでしょ、帰りますよ。」
「うん。ばいばいグルッペンくん。」
「お幸せに。」

見守るような優しい笑顔で手を上げるグルッペンくんに笑って別れを告げる。
繋げた手を振りながら桜の舞う歩道を歩く。

「振られちゃった。」
「彼氏がいるのに告白なんて、ほんまアホっすわ。」
「いいの、今はトントンの方が好きになっちゃったんだもん。」
「……ほんま頭弱いっすね。」

視線を上げると少し赤くなったトントンの頬に目を細める。
照れ隠しの憎まれ口も今はただ愛しいだけ。

運命を掴み取れ！／htrn→← →続

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