【wrwrd!】短編集 (ページ12)

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生意気な君／tn ページ12

＊高校生設定です。
(前の短編との繋がりはありません。)

前が見えないくらいの箱を重ねて歩く。
中身はそんなに入ってるわけじゃないから重くはないけど、見えない前方に注意しながら少し横向きに慎重に、それでも少しでも早くと足を進める。

「A先輩、相変わらず頭悪いっすねぇ。」

腕の中から積み重なった箱が半分以上消えて、無駄に背の高い後輩の姿が目の前に現れた。
頭が悪いという直接的な悪口に顔を顰めながら口を開く。

「トントンは相変わらず口が悪いね。ほんとに大天使って言われてるの君の事？」
「先輩くらいっすよ、俺がこんな事言うの。」
「嬉しくな～い。」

憎まれ口を叩きながらしっかり足は目的地へ進む。
どこに行くかは言わなくても分かるみたいでトントンも並んで歩く。

「まだ手伝ってるんっすか？もう生徒会も引退したんだし受験勉強とかしたらどうっすか？」
「受験はＡ判定貰ってるし…引継ぎしたばかりって大変なの知ってるから…。」
「グル氏に頼まれたからでしょ。」
「…別に関係ないよ。」
「早く告白すればいいのに、振られるでしょうけど。」
「分かってるなら言わないでよ。」

告白なんかしても振られるのは分かってる。
私の事なんて頼み事を引き受けてくれる便利な先輩くらいにしか思われてないだろう。
それなのにわざわざ言って無駄に傷つくのなんかごめんだ。
このまま卒業まで当たり障りない会話ができればそれでいい、時間が経てば自然とこの気持ちも消えていい思い出になってくれるだろう。

「それだと困るんですよねぇ。」

ボソボソと話した言葉をしっかりと聞いていたトントンは微妙に顔を顰めていた。
彼からしたら親しい友人に付きまとう先輩に迷惑してるのかも。
生徒会だって引退してもう二ヵ月になるのに、いつまでも出しゃばってウロウロされたら鬱陶しいだろう。
自分の思考に少ししゅんとして顔を下げると、上から溜息をつく音がした。

「やっぱ先輩って頭悪いっすね。」
「分かってるもん…。」
「いや、全く分かってないですわ。」

どういう意味だろうと思ったけど、それを聞く前にたどり着いた生徒会室。
横のトントンが扉に向かって声をかける。

「おーい、誰かおるんやろ開けてーや。」

扉の奥で誰かが近寄ってくる足音がした。
ガチャリと開いた扉の間から想いを寄せる金髪の彼の姿が見えた。