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胸ポケットから取り出した便箋を開く。
かすかに香る懐かしいAの甘い匂い。

『グルッペンへ
 約束を守れなくてごめんなさい。
 あなたに、会いたい。』

僅かに震えた文字で短く記された手紙。
涙の跡であろうか、ポツリとついたシミを指でなぞる。

オスマンがアスタムから持ち帰った菓子を見た時は思わず固まってしまった。
それがアスタムのパティシエから貰った物だと言われた時は嘘だと思った。
そんなバカな話があるか。
Aはあの家で俺の帰りを待ってるはずだ。
アスタムなんかにいるはずがない。
危険から遠ざけるために置いてきたのだ。

どの菓子も昔Aが作った物に見えた。
一つ残らず俺の記憶に刻まれている優しい味。
口に含んだ瞬間襲ったのは絶望だった。
俺がAの菓子の味を忘れるなんてあり得ないのだ。

「すまん。」

届く事のない謝罪を手紙を通してAに呟く。
この4年、アスタムで何を思って過ごしていたんだろうか。
俺が自分勝手に取り付けた約束を守れなかった事を責めれるはずなんてないだろう。
悪いのは全部俺なのに、お前が心を痛める必要なんてないのに。

無我夢中で走り続けたこの6年。
一日たりともAの事を考えなかった日などなかった。

トントンの判断は正しかったのだと思う。
きっと俺は皇太子が視界に入ってしまえば迷いもせず剣を振り下ろしただろう。
俺がAを思って耐えていた間に、あいつの隣に立っていた、その事実に俺の腹の底からどす黒い感情が沸きあがる。

俺の物、返してもらうぞ。

決戦は明日の夜。
一緒に死んでやると言ってくれた仲間たち、ただ待つというのも辛いけど、きっとあいつらならやってくれると信じている。

「もうすぐや、もうすぐお前に会える。」

握りしめた拳がみしりと音を立てる。
この腕でもう一度お前を抱きたくて堪らないんだ。

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なな - うん。 いや最推しにこんなんされたらもう本当ヤバいなぁ…((語彙力ッ いやグルちゃんかっこええ~… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - グルさんイケメン…最推しです(*´ー`*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 75さん» 75さんコメントありがとうございます!楽しんで貰えたなら幸いです!!続編も次回作も早くお届けできますよう頑張ります!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月22日 12時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
75(プロフ) - ひとちん様初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。この度は完結おめでとうございます!秀逸な作品構成にどきどきしながらページを送っておりました。続編、次回作共に首を長くしてお待ちしてます!体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。 (2017年8月22日 12時) (レス) id: 97ace52c10 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 水鈴さん» 水鈴さんコメントありがとうございます!感想とても嬉しいです!!2では二人のその後などを書かせて頂く予定ですので完成したらぜひそちらもご覧になってくれると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月21日 22時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひとちん | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年7月23日 23時

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