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「ただいま…。」
どうやって帰って来たのか分からない。
いつの間にかたどり着いた家に力なく入ると、ソファに座るグルッペンが心配そうな顔をした。
「どうした?元気がないようだが…疲れたのか?」
「うん、ちょっとね…。」
曖昧に笑ってグルッペンの隣に座る。
雑誌を待つ手が震えてしまう、ここに書かれている内容が真実だとしたらグルッペンは恐らくワズルに行くだろう。
いっそこのまま燃やしてしまいたい。
ふと浮かんだ汚い考えに嫌気がさす。
なんて自分勝手なんだろう、グルッペンは迎えに来てくれると約束までくれたというのに。
泣きそうなのを笑って誤魔化し、俯いたまま雑誌を開いた。
「グルッペン、見て。」
ワズルの事が書かれたページを開いてグルッペンの膝に雑誌を乗せる。
グルッペンの手が雑誌を掴んだのを見届けたあと下を向いた。
怖くて反応が見れない。
お願い嘘だと言って、でたらめばかりの内容だと笑って。
そう願いはするものの、心の奥では確信めいた予感があった、彼の仲間はきっとワズルにいる。
しばらくすると横からふぅと息をついた音がした。
その音にピクリと体が反応したが、顔が上げられなかった。
「A、こいつなんだが。」
そう言って雑誌に当てられたグルッペンの指先は、おばさまたちと話した神官様をさしていた。
「これがオスマン。」
「オスマンさん・・・。甘党の人、だよね。」
「そうだ。結論から言うとあいつらはワズルにいる。」
やっぱり。
そうじゃないかとは思っていたが、グルッペンの口から直接言われると途端に現実味が増す。
俯いてると膝の上に乗せた拳にグルッペンの温かい手が重なる。
いつの間にか強く握りしめていた拳が、その温もりで弛緩する。
「A…。」
「うん、言わなくても分かってる。行かなきゃね。」
重ねられたグルッペンの手の上に雫が一つ落ちた。
グルッペンの手に力が籠る。
「ワズルという小国を内側から支配してる。国力をつけてからアスタムをもう一度落としにいく。」
「うん…。」
「恐らくオスマンだけやない、トントンもすでに絡んでいるだろうな。」
「うん…。」
「アスタムに顔が割れてないオスマンが表立って出る事で俺たちに知らせようとしてる。」
「う、ん…。」
「すまん。」
もう相槌すら打てなくなってしまった。
グルッペンが謝る事じゃないのに、最初から分かっていた事なのに。
溢れ出る涙を止めるすべが見つからなかった。
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なな - うん。 いや最推しにこんなんされたらもう本当ヤバいなぁ…((語彙力ッ いやグルちゃんかっこええ~… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - グルさんイケメン…最推しです(*´ー`*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 75さん» 75さんコメントありがとうございます!楽しんで貰えたなら幸いです!!続編も次回作も早くお届けできますよう頑張ります!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月22日 12時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
75(プロフ) - ひとちん様初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。この度は完結おめでとうございます!秀逸な作品構成にどきどきしながらページを送っておりました。続編、次回作共に首を長くしてお待ちしてます!体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。 (2017年8月22日 12時) (レス) id: 97ace52c10 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 水鈴さん» 水鈴さんコメントありがとうございます!感想とても嬉しいです!!2では二人のその後などを書かせて頂く予定ですので完成したらぜひそちらもご覧になってくれると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月21日 22時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
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