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いつものように町へお菓子を売りに行く。
ざわざわとした人混みの中、顔なじみのおばさま達が集まって話していた。
声をかけるとお菓子を買ってくれるついでにと話しを振られる。
「Aちゃんワズルって国知ってる?」
「いや、聞いた事ないですね。」
「小さい国だったんだけどね、ここ最近近隣の国に外交やら戦争やらですごい勢いで大きくなってるのよ。」
「へぇすごいですね。」
「まぁここからだと遠いけど、5年後10年後にはどうなってるか分からないわよ。」
怖いわよねぇと言い合いながらも、全くそんな事思ってなさそうな様子に和んでしまう。
ピンとこないのはこの町が平和な証拠だね。
「そういえばワズルにはあのアスタム帝国の反乱軍が絡んでるって噂よ。」
突然出た言葉に動きが止まった。
アスタム帝国の反乱軍…グルッペンたちの事だ。
「あぁそういえば雑誌にそんなこと載ってたわねぇ。」
「それ私持ってるわよ、ワズルの王様の写真も載ってたわよね。」
そう言って鞄の中から一冊の雑誌を取り出し広げる。
正面からその雑誌を覗き込むと『急速に拡大するワズル、アスタム反乱軍の暗躍か』という見出しの横に家臣たちに囲まれにこやかに笑うワズルの王様と思われる人の写真が載っていた。
「この神官様素敵じゃない?」
「あらほんと、キレイな方ね。」
「微笑んだ顔が優しそうねぇ。」
食い入るように雑誌を見つめていると、おばさま達の話題は王様の横に立つ神官様になっていた。
「ふふっそんなに見つめて、Aちゃんも神官様にうっとりしてるの?」
「そ、うですね。ステキな方だと思います。」
「Aちゃんって色恋沙汰に興味薄いのにこういう方がタイプだったのね。」
クスクスと笑うおばさま達に反応ができない。
意識が全て雑誌に集中してしまっている。
「あの、この雑誌ってまだ売ってますかね?」
「えぇ!そんなに気に入ったの?ならAちゃんにあげるわ!」
よほど神官様が気に入ったのね、と勘違いされていたが一刻も早く雑誌を読みたかったので否定はしなかった。
おばさま達にお礼を言ってから、胸に雑誌を抱えてその場を去った。
公園で一人ベンチに座って雑誌を読んだ。
ゴシップ色の強いそれは内容のほとんどが憶測や噂でできており、全てを読んでも一体どこまでが真実でどこからが嘘なのか判断できなかった。
「グルッペンに見せなきゃ…。」
漠然と感じた。
この雑誌は恐らく私たちのこれからを変えるものになる。
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なな - うん。 いや最推しにこんなんされたらもう本当ヤバいなぁ…((語彙力ッ いやグルちゃんかっこええ~… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - グルさんイケメン…最推しです(*´ー`*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 75さん» 75さんコメントありがとうございます!楽しんで貰えたなら幸いです!!続編も次回作も早くお届けできますよう頑張ります!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月22日 12時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
75(プロフ) - ひとちん様初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。この度は完結おめでとうございます!秀逸な作品構成にどきどきしながらページを送っておりました。続編、次回作共に首を長くしてお待ちしてます!体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。 (2017年8月22日 12時) (レス) id: 97ace52c10 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 水鈴さん» 水鈴さんコメントありがとうございます!感想とても嬉しいです!!2では二人のその後などを書かせて頂く予定ですので完成したらぜひそちらもご覧になってくれると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月21日 22時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
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