KAITO短編集

そしてカイトはヤンデレに挑戦しようとする(ヤンデレ要素ほぼ0)　７ ページ47

「普段あんまりな扱いだから、マスター僕のこと嫌いなのかと」
「何だそれは。……それは、お前も悪い」
「え？」
「お前は……優しすぎるんだよ」

　そんなこと、マスターに言われるなんて思ってもみなかった。

「いじっても、多少パシリにしてもお前は怒らないでその立ち位置に甘んじて。少しは主張というものを知れ。怒りを知らないヘタレのように振る舞うことばかり覚えるな」

　予想外の言葉に呆然とする僕に、マスターは人差し指を突き出して言う。

「それにお前、いじると面白いからな！」
「それ結局いじる前提に話戻ってません!?」

　ハッとして必死に言葉を探そうとするマスターに、僕は微笑みかける。

「マスター」
「な、何だ？」
「少しは、主張しても、いいんですよね？」
「あぁ、今言ったばかりじゃないか」
「じゃあ……」

　マスターの両頬に、僕の両手を重ねて言う。

「今日くらいは、僕のことだけ、見ててくれますか？ 誕生日ですし。みんなもいませんし」
「わ、わかったよ！ そ、その、アイスケーキ買ってあるんだからな！ お前のためなんだからな！ 取ってくるからな！」

　そう言ってマスターは、言ったそばから目をそらしてしまう。
　それでも、そう、今日は誕生日。
　素敵な、誕生日だ。

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