小さな願い 11 ページ38
「嘘つき…ずっと側にいてくれるって、私をひとりにしないって、そう言ったじゃないか……」
……違う。
最初から、ずっとなんて、永遠なんて存在しない。
形あるもの、いつかは壊れる。
経年劣化、そんな言葉がある。
全てのものは変わっていく。
知ってた。わかってた。
君に出会う、ずっと前から。
出会っては、別れる。
それを繰り返してきたから、"さようなら"には慣れていた。
……はずだった。
君は、誰よりも長いこと、ずっと私の側にいてくれたから。
自分でも気づかないうちに、私は永遠を願っていた。
ずっとそうだと信じていた。
君だって、絶対じゃない。
形がある。いつかは、壊れる。
だけど、君といた時間は、あまりにも長すぎた。
君は私にとって、あまりにも特別でありすぎた。
2人でいた暖かな時間が、無くなってしまって……
初めて、気づいたよ。
君が、すごくすごく大切だったって。
大切なものは失って初めて気づくってさ、どこの人間だっけ、よくも言ったもんだよね。
行かないで。私の側にいて。
ひとりにしないで。寂しいよ。
これが…人間の別離、ってものなのか。
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私が君に話した最初の話。
「昔々…永遠の命を願った者がいたんだよ…」
その結末は……
何もかもが変わっていく様を見続けた者はこう言った。
永遠の命なんていらないよ。
永遠に死んでいるのと同じ。
そんなもの、もういらないから…
普通に生きて、同じように死んでいけたらどれだけ幸せか。
そしてその人は気づいたんだ。
限りがあるからこそ、移ろいゆくからこそ、この世界は美しいんだって。
「永遠なんていらないから、
君と一緒に消えてしまえたら……
永遠も絶対も、存在し得ないなら……」
『どんなに全てが変わっていくように見えても、そのときそこにあったこと、その時間は確かに存在していた、その事実は動かず、絶対であるんだ、そういう言葉なんだと僕は思います』
「カイト!?」
どこか遠くから聞こえたような、君の声。
君が私にくれた時間は……変わらない。
限りがあったからこそ、その時間はよりいっそう輝く。
「ありがとう……大好きだよ」
涙と、時とを胸に抱いて………
私は静かに、瞳を閉じた。
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あかり - 糸魚川翡翠@京都より帰還さん» 翡翠ちゃんは帯人が好きなんですよね? (2016年2月29日 19時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» ただいま! そうね、短編集の方ではあまり亜種は書かないからな。 (2016年2月29日 10時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 翡翠さん!おかえりなさい!やっぱりヤンデレカイトでしたか! (2016年2月28日 20時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» YESヤンデレカイト!! ラストの一言ってところがお気に入りです。 (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» 書いてる私のテンションも高かったりしますw (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸魚川翡翠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisui0327/
作成日時:2015年10月11日 10時