小さな願い 6 ページ33
『マスター、どこか行きませんか?』
「どこか行くって、私は土地神だからな…出雲に呼ばれたときくらいだよ、この地域から離れられるのは」
もっとも、私みたいな下級の神が出雲に呼ばれるのは毎年なんかではなく、本当になんか大きなことのある、数百年に一度とか、そんなもんだ。
友神(ゆうじん)がいるわけでもない。
『マスターは、ずっとここにいて退屈じゃないんですか?』
「そんなもん慣れた。むしろ今は、お前がいてくれてるからな。話し相手に困らなくて楽しい」
『それは…嬉しいです。僕は平気ですけど、マスター退屈していないかな、と』
「優しいな、お前は」
あれから、十数年は経ったかと思うけど、彼の笑顔は当時と何も変わりない。
そうか、お前も、人間じゃないんだな。
老いて、死んでゆく。
それとは違う定めを、送るというのだな。
『ここは、神社なんですよね』
「何だ?今更」
そりゃ、半世紀以上前から神主はいなくなり、四半世紀前くらいには訪れる人もいなくなったし。
私とカイトが出会ってからというもの、現れたのなんか迷い込んだ狸とか、その類だ。
『お祭りとか、無かったんですか?』
「ずっと昔はあったけどな」
私に退屈でないか聞いているようで、実はカイトが退屈しているんじゃないか?
『じゃあ、やりましょうよ、お祭り!』
「はぁ!?」
『だって、せっかくマスターは神様なんですよ?なんか、もったいないじゃないですか!』
「なんだそりゃ!それ、カイトが退屈してるんじゃないか?」
それなら私でなく、人間のマスターといた方がいいんじゃないだろうか?
『やっぱ、やめました』
「んだよ」
『いろんな人が来て、沢山お願い事が来て、マスターが忙しくなってしまったらちょっと寂しいですから』
……なんか、可愛いな。
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あかり - 糸魚川翡翠@京都より帰還さん» 翡翠ちゃんは帯人が好きなんですよね? (2016年2月29日 19時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» ただいま! そうね、短編集の方ではあまり亜種は書かないからな。 (2016年2月29日 10時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 翡翠さん!おかえりなさい!やっぱりヤンデレカイトでしたか! (2016年2月28日 20時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» YESヤンデレカイト!! ラストの一言ってところがお気に入りです。 (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» 書いてる私のテンションも高かったりしますw (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸魚川翡翠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisui0327/
作成日時:2015年10月11日 10時