小さな願い 3 ページ30
ホント、いつ帰ってきても寂れた境内だなぁ。
『本当に、神様だったんですね。捨てる神あれば拾う神ありの神が本当に神様だったとは』
「捨てられたって、あの古紙回収のとこか。しかも週刊誌に混ざって」
『古紙回収!?僕のどこが古紙なんですか!捨てるにしてももうちょいマシな捨て方あるじゃないですか!』
「私に言うな!」
まだ、ちょっとしか話してないけど、こいつ、面白い。
『引っ越しの際に置いていかれたんです。理不尽ですよね。他のみんなは連れていってもらえたのに』
「あぁ、次の家が飼えないとこだから、犬を元の家に置いていくような奴か。あれは、酷いよな。ここによく、届くんだ。置いていかれたやつらの、心がな。でも、私はちっぽけな神で、人間はどんどん変わっていって、何もできなくて……」
『わわっ、何かごめんなさい!マスターに暗い話しちゃって…』
「いや、いいよ」
こうやって話すことができる相手自体、ほとんどいなかったんだから。
ついこの前、爺と出会うまでは、しばらくひとりもいなかった。
私のことが見える人がいても、すぐにどこかへ越してしまったり、死んでしまったり。
見えなくても信じてくれる、そんな人も最近はいなくなったのだろう。
この社には、誰も来なくなった。
「話ができるだけで、十分だ」
そういえば、爺はどうしただろうか。
まぁ、爺とはいえ、私の方が何百倍も生きてるんだがな。
「すこし、気になることがあるんだ。出かけてくるけど、必ず戻ってくる。前の人みたいに、ずっと置いていったりしないから、安心しろ」
『わかりました、お待ちしていますね』
もういちど、いつもの土手に向かう。
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あかり - 糸魚川翡翠@京都より帰還さん» 翡翠ちゃんは帯人が好きなんですよね? (2016年2月29日 19時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» ただいま! そうね、短編集の方ではあまり亜種は書かないからな。 (2016年2月29日 10時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 翡翠さん!おかえりなさい!やっぱりヤンデレカイトでしたか! (2016年2月28日 20時) (レス) id: b06cf0ef99 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» YESヤンデレカイト!! ラストの一言ってところがお気に入りです。 (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
糸魚川翡翠@京都より帰還(プロフ) - あかりさん» 書いてる私のテンションも高かったりしますw (2016年2月28日 11時) (レス) id: 9384caea49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸魚川翡翠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisui0327/
作成日時:2015年10月11日 10時