3166.【2】 ページ16
［潤side］
どうしよう…
「ウォンッ、ウォンッ！」
発生する炎と煙に、あらしも興奮状態…
誰かを呼びに行ってたら間に合わないかもしれない。
そう思って、鉄パイプを退かそうと力を込める。
「…っ、ごほっ…ごほっ…」
酷くなる煙で噎せてしまうし、目も痛い。
力任せに何とかしようとしても、鉄パイプは
ビクともしない。
それでも必死になっていたら…
和「潤！あらしのこと連れて逃げて！」
「は？…何言ってんの」
信じられない言葉。
和のこと置いて逃げるなんてできるワケない。
「そんなことしねーから」
和「…ゅん、お願い」
「うるせー、黙ってろ！今、退かすから」
なんとかして助けたいと思うのに、どんなに力を
込めても、どうにもならなくて…
目が痛くてなのか、悔しくてなのか、涙がどんどん
溢れてくる。
「…っ、んっ…くそっ…」
「ウォンッ、ウォンッ！！」
和「…ゅん、お願い。あらしのこと連れて逃げて…」
「かず…」
「自分を置いていけ」って言葉を何度も口にする和を
最初は無視し続けていたんだけど…
『あらしのこと助けて』って。
『俺はここで待ってるから、誰か呼んできて』って。
優しい顔してそう言うから…
「分かった、ちょっと待ってろ。すぐ戻る…」
［雅にぃside］
朝から散歩に行くのはいいんだけどさぁ…
「ちょっと見てくる！」
智「ありがと…頼む〜」
1時間経っても帰ってこないし、LINEが既読にも
ならないから。
夢中になってしまってるのは分かるんだけど、和は
朝の薬もあるからね。
朝食食べさせないと。
「あ、もしもし？潤？」
潤「雅にぃ！！きて！！」
「はぁ？笑」
家を出てすぐに電話したら、1コール目で応答。
はじめは潤の声が弾んでいるように聞こえて…
でもすぐに、異常事態なんだと気が付いた。
「どこ？今すぐいくから！！」
潤から場所を聞いて、そこに向かいながら消防に
通報。
そのまま走りながら智にぃに電話。
潤「雅にぃ！！こっち！」
途中まで走ってきた潤と合流。
潤はあらしのリードをしっかり握っている。
きっと和に頼まれたんだろうね…
「お前はここにいろ。すぐ消防車くるから！」
潤「やだ！」
「待ってろ！」
廃墟の前で、半ば無理やりに潤を待たせて俺だけ
中へ。
「かず！！和！！」
和「…さにぃ、ここ…」
和のか細い声が聞こえて…
「すぐ助けるからな…」
和「…ん」
小さく笑みを浮かべた和は、ゆっくりと意識を
失っていった。
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作者名：空
| 作成日時：2019年6月7日 19時
