3116.【長男の幼き頃…と思い】 ページ16
［NO side］
夢を見ていた…
母親の腕に抱かれる智。
1歳を過ぎたばかりの智は両親の愛情を一人で
たっぷりと受けて、ゆっくりゆっくり成長していた。
母親のお腹の中には翔がいて、出産を控えていたが
大きくなってきたお腹で智を抱っこするのが
喜びでもあった。
父「さとしー、散歩いこうか」
智「ん ♪」
父「はは！抱っこでいくのか？笑」
母「んふふ…」
散歩の誘いを受けて、母親の手から父親の手へ。
智はベビーカーよりも父親の抱っこで散歩をするのが
好きで、いつも手を伸ばして抱っこをねだっていた。
一人目の子どもで、さらに男の子ということと、
智に欲がないことも重なり、成長は割とゆっくり。
立つのも歩くのも、喋るのも…智には智のペースが
あった。
周りは心配したり急かしたりすることもあったが、
両親は「智の好きなように大きくなっていいのよ」が
口ぐせ。
いつでも守ってくれたし、いつでも好きなように
させてくれた。
翔が生まれたからといって、愛情は2分の1になる
ワケでもなく…
母「さとし〜、おいで？」
父「さとし〜」
智「ん ♪」
むしろ2倍になったんではないか…という程、両親は
たっぷりの愛情で智を包み込んだ。
そのお陰で智は、翔のことも雅紀のことも自然に
受け入れ、嫉妬したり邪魔だと思うことなく、大切な
存在として認識して、成長していくのである。
［智にぃside］
久しぶりに父ちゃんと母ちゃんの夢を見た。
長くて濃厚で…現実と混同してしまうような夢。
腕の中の俺は幸せそうに笑っていた…
ベッドの中で夢を思い出していると、自然と涙が
溢れてきて頬を濡らす。
悲しいワケじゃない。
寂しいワケじゃない。
ただ、なんだか温かい気持ちになって心が満たされて
いく…
そんな不思議な感覚。
それから何日か連続で同じような夢を見た。
少しだけの日もあれば、長くて濃厚な夢の日も
あって…
夢から覚めた後は、2人が傍にいてくれるような妙な
安心感と、喜びでいっぱいになってる。
起きてすぐに仏壇の前に座って…
『ありがとう…今日も夢に出てきてね…』
そっと伝える。
本当はもっと甘えたかったんだ…って気が付いた
自分がいる。
これから、結婚したり、子どもができたり…
そんな時、俺だって父ちゃんや母ちゃんに相談
したい。
『智の好きなようにしていいよ』ってその言葉。
それだけでどれだけ救われるか。
会いたいな…
甘えたいな…
その思いは日に日に膨らんでいった。
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作者名：空
| 作成日時：2019年3月25日 20時
