2035.【4】 ページ35
［翔にぃside］
翌日、
潤を連れて病院へ。
家を出るとき、真っ先に車の後部座席に
乗り込んでそこからは、黙って窓の外を
眺めていた潤。
智にぃが何度か声を掛けていたけど、視線も
合わせず、反応することはなかった。
智「じゅん…？降りといで…」
病院に着いてからは、なかなか車から降りて
こなくて…
潤「…」
智「ん…いいよ。気持ちの整理がつくまで
待ってるから…」
それでも、こうやって智にぃがゆったりと
落ち着いたペースで接してくれるから…
俺も見習おうって思う。
10分くらいは、そうしてたかな…
潤「…いく」
小さく呟いた潤が車から降りてきてくれた。
智「ふふ…行こっか」
潤「…」
こうして素直になれない潤だけど、不安な気持ちは
大きいはず。
智にぃと目配せして、両側から挟んで歩く。
「ちょっと早かったかな…座って待ってよっか」
潤「…」
智「ふふ。じゅん…おいで」
椅子の前に突っ立ったままの潤を、智にぃが
優しく手を引いて座らせてくれたから
俺も隣に座る。
智にぃがゆっくりと背中をさすり続けて
くれていたから、少しずつ体から力が
抜けてきたみたい。
それでもまだ、握り締められたままの手。
そっと膝の上で包み込んだら、潤んだ目で
じっと見つめてくる…
「…ん？心配…？」
潤「…」
視線を逸らさずに、でも何も答えずに…
少しの時間がそうして経った頃、何かを伝えようと口が小さく開いた。
潤「…ん、…？」
「…ん？」
潤「…ょ、に、いて…？」
「ん、一緒にいるよ。大丈夫…」
潤「…ん」
不安な気持ちを言葉で表してくれたことに
安心する。
こんな時だもん…少しでも心の負担は減らして
やりたい。
検査の時間までの間、和の病気のことを
知りたがったから、沢山話した。
カウンセラーに相談した時に「潤くんが
知りたがるようであれば、隠す必要はない」って
言われていたから。
知りたいに決まってるよな…
病気のことを忘れたとしても、和に対しての
気持ちは変わってないんだから。
話をするにつれて、どんどん顔が曇っていくけど
それでも「わかった…教えてくれてありがと…」
って、最後には微かに笑顔を見せてくれた。
名前を呼ばれて、まずは診察室へ。
それから脳の検査へ。
潤は終始不安顔で智にぃや俺に掴まって
「いて…？」って目を潤ませていたけれど
器械の中に一人で入らなければいけなくなっても
「まってて…？」って呟いて頑張ってくれた。
そんな姿に、潤の強さを感じる…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
