2004.【4】 ページ4
［翔にぃside］
夢を見るようになった…
和にあの検査をする夢。
沢山の医師と看護師に体を抑えつけられた和が
検査台に寝かされて泣き叫んでいて…
俺はそんな和の胸に注射針を突き刺す。
夢はいつもそこで、プツリ…途切れる。
『俺が和の担当医なんかにならなきゃ
良かったんだ…』
『医者になんてならなければ、和が「なんで？」
って戸惑うことだってなかったのに…』
『中途半端に助けようとするから、困惑して
泣いてしまうんじゃないか…』
色んな思いが交差して、もうパンクしそう…
「…っ、…やりたく、ない…」
そんな状態で迎えた検査当日の朝。
俺は和の病室に入れずに検査することを拒否。
智にぃが「和も昨日から、かなり情緒不安定でさ…
今朝は熱が高くて…それでも『翔にぃ』って
呼んでるよ？」って教えてくれたけど。
とてもじゃないけど、病室に入れるような状態では
なくって…
「…っ、…もう、いい…」
智「…ん？」
「…っ、…当医、やめ、たい…」
酷いよね、こんなこと…
和が頑張ってるっていうのに…
「…んっ、…んくっ…」
それでもやっぱり足が進まなくって…
そんな時「翔くん？」って先輩の声。
智にぃの「…お願いしてもいいですか？」って
言葉のすぐ後に、先輩は俺の腕を引いた。
［先輩side］
翔くんが和くんの検査のことで悩んでいるのは
知っていた。
智くんから連絡をもらっていたから…
『もしかしたら今回は、重症かもしれない』
ってね。
智くんの予想は当たってしまった。
検査当日の朝、病室の前で泣いていた翔くんは
いつもの姿からは想像できない弱々しいもので…
医局まで連れてきたら「担当医、やめさせて
下さい」って頼み込んできた。
本気ではないことが分かるけどね。
だって、俺の目を見ようとしないし
溢れる涙も止まる気配がないから…
「話はいくらでも聞くから…」
翔「…っ、先輩…担当医、やって
くれます、か…？」
「ああ、いいよ。お前がほんとに望むならな」
背中をさすりながら、落ち着くのをゆっくりと
待つしかない。
こういう時は感情的になっても、お互いに
いい方向には進まないから…
翔「…っ、んっ…和、熱が、あって…」
「ん、看護師から聞いてる。だから大丈夫」
翔「…あと、で、診て、くれます、か…？」
「もちろん」
尚も涙を零して俯きながら、翔くんは言葉を
繋ぐ。
心配なのは和くんのこと。
自分のことより、いつだって兄弟のことを思う
優しい奴だもんな…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
