2023.【8】 ページ23
［智にぃside］
検査室に入って
だいぶ時間が経ってから、響いてきた泣き声。
先生が「智くん、お願い」ってドアを開けて
出てきた。
「手術しない」って若干パニックに
なりかけている和。
そんな和を力だけで抑え込もうとしてる翔。
状況はあまり良くないみたい…
手術については、エコーの結果を記録して
あとで話し合って決めるって翔から説明されてた。
だから…
『あまりに病状が悪くて即決して
しまったのかな…』
そんな思いが頭を過る…
でも、だとしても翔と先生が和をパニックに
落とし入れるような方法を選ぶはずがない。
そんな俺の心を読み取ったのかな…
先生が「手術のことは決めてないから大丈夫。
ちょっとね、叱られちゃって…
翔くん、厳しいから。笑」って。
苦笑いした先生を見て、状況を察した。
翔もだいぶ思い詰めていたからね…
「ちゃんと検査受けさせなきゃ」って思いが
先にたってしまったんだろうね。
先「もう終わりで大丈夫だから。
智くんが抱きしめてあげて？」
「はい…」
和に近寄った俺と共に、先生も近くにきて
「翔くん？」って声を掛ける。
翔「…っ、すみません…」
我に返った翔の肩を抱いて、傍を離れた先生。
翔の手から逃れようとして抵抗していた和を
そっと抱き寄せる。
和「…っ、手術、しないっ…、んっ…」
「かず…？検査おしまいだって。頑張ったねぇ…」
手術のことには触れずに、腕の中におさめて
背中をポンポンする。
和も翔も、不安だった思いは同じはず。
和の嗚咽が落ち着いた頃、翔はそっと寄ってきて
「…ごめんな、かず。怒って、ごめん…」って
謝りながら頭を撫でてくれた。
和「…っ、ん…」
真っ赤な目をした和が、俺にしがみ付きながら
見上げてくる。
「…ん？和も、翔に言わなきゃいけないこと
あるんじゃない…？」
刺激はしないように…
でも、謝らなきゃいけないよ？ってことは
伝えておきたいから。
翔だけが悪かったわけじゃないからね…
和「…っん、ん…」
「和なら言えると思うんだけどなぁ〜…」
頭を撫でながら促したら「ごめんなさい…」って
小さい声が聞こえてきた。
「ごめんな…もう終わりな」って
翔の言葉に頷いて抱き付いた和は
そのまま抱き上げてもらって病室へと移動。
検査が終わって、緊張から解放されたのか
「智にぃ、これ見よ？」って雑誌を出して
久しぶりに笑顔を見せてくれた。
その隙に翔は、他の医師達と検査結果について
話し合いに出かけていった…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
