2019.【4】 ページ19
［雅にぃside］
和「んっ…んん〜…」
翔「痛いな…冷やそっか…
まさ？手、握っててやって？」
「…ん、わかった」
頭痛が辛すぎて、髪の毛を掴んでしまう手。
すごい力が入っているけど、俺が手を添えれば
すぐに離してくれる…
その手を握って和のお腹の上で包み込む。
和「…っ、んっ…、…たい」
「ん、痛いね…」
和「…っん、…っ、…れちゃ、う…」
苦痛に顔を歪めて「割れちゃうよ…」って
訴えてくる。
俺は一体、何をしてあげたらいいんだろ…
ふと、ベッドサイドのテレビボードの上に置かれた
紙袋が目についた。
紙袋の中には、和の為にと持ってきたゲームが
入ったまま。
検査入院の最終日の夜、和は検査が長引くことを
悟りながらも「明日、退院だから片付けよっと」
ってゲームを大事そうにしまっていた。
意地というか…信じたい思いからなんだろうけど
切なくて辛かった…
その後は入院が延期になったことを受け入れ
られなかったから、ゲームする余裕はなく。
受け入れたと思ったら…抗がん剤治療で
苦しくて、ゲームなんてできず。
現実と向き合うのは辛い…
和「…っ、…さにぃ、…うした、の…？」
「あっ…ごめん。んーん。なんでもない」
両手を握ったままボーッとし過ぎて
和にまで心配かけてしまった…
翔「冷たいタオル当てておくな？
雅紀に替えてもらって？」
翔にぃは「ね？」って俺に優しく笑う。
翔にぃは強いよね…
俺なんかより、ずっと辛い環境にいるのに。
和「…ん、…りがと…」
こいつも強い。
俺と翔にぃにお礼を言って小さく笑う。
俺も負けてられない。
辛いのは和だから、少しでも力になりたいね…
和「…んっ、んー…」
冷やすことで気が紛れるのは、ほんの少し。
すぐに酷い頭痛に苦しみ始める。
「かず…？手握ってるから、力抜いてごらん…？」
和「…ん、んん〜…」
歯をくいしばってしまうからマウスピースを
入れてあげてる。
それも擦り切れそうになってしまう程の力。
それ程に痛いってこと…
経験した人にしか分からないんだろうな…って。
和「んっ、んー…」
「ん、痛いね…」
和と病室に2人きり。
気休めだけど、何度も冷たいタオルに替えて
頭を撫でて。
和「…っん、んー…、んっ…」
痛いね…
辛いね…
堪え切れなくなって零れ始める和の涙。
タオルでそっと拭って頭を撫でる。
和「…っ、…っと、やって…？」
「…ん。ずっとやってるからね」
少し気が紛れるみたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1671人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
