2015.【6】 ページ15
［智にぃside］
声が出なくなった雅紀は
塞ぎ込みがち。
双子が騒がしく絡んでいってくれるけど、口元を
ちょっと緩ませて笑うのがやっと。
そんな時だった。
ピンポーン…
雅紀の職場の同僚が訪ねてきてくれた。
けれど雅紀は首を振って、会うことを頑なに拒否。
同僚の人達も「今日、これが届いたので、持って
きただけですから、大丈夫です」って
言ってくれたから受け取るだけにしておいた。
弱った自分の姿を見せたくない気持ちは分かるから
強制はしたくなかった…
それに雅紀は、自分の姿を見せて心配を
掛けるのも嫌なんだろうなと思ったから…
潤「雅にぃ？小学校からだよ？」
和「開けていい？」
双子は雅紀が頷くのを待って封筒を開ける。
中から出てきたのは『移動動物園』の御礼状。
画用紙で作られたカラフルなカードが1年生
2クラス分。
中には子ども達からの感想がずらり。
文章から伝わってくるのは、子ども達の
真っ直ぐな想い。
『犬がとってもかわいかったです！』
『ぼくもウサギがほしくなりました！』
なんてものから…
『つなぎの、
まさきお兄さんがかっこよかったです』
なんて、女の子からのラブコールも。笑
カードを読み始めた雅紀の顔から、徐々に
不安や緊張が消えていくのが分かる。
最後に添えられていたのは1年生の学年主任の
先生からの手紙。
そこには『犬アレルギーの子どもの配慮まで
ご丁寧にして頂き、楽しませて下さって本当に
ありがとうございました。細やかな配慮と優しさ…
子ども達は学ぶものが多かったように思います』
そう綴られていた。
そして最後は『信頼できる素敵な移動動物園に
出会えたことに、心から感謝致します。
来年も貴園に依頼を致します』と結ばれていて。
空気を読んだのかな…笑
そっといなくなった双子に感謝しつつ、
智にぃと俺は、雅紀を挟んで座る。
雅「…っ、…んっ、…っ…」
智「よかったね…まさき」
雅「…っ、ん…、んくっ…い、いの…？」
智「…ん？」
雅紀は泣きながら「俺、仕事続けてもいいの？」
って。
智「この手紙が、雅紀の頑張ってきた証に
なるんじゃない？」
「そうだよ。やめたら勿体ない。
みんなに惜しまれちゃうだろ？」
雅「…っ、んっ…んくっ…」
自信もって大丈夫だよ、雅紀。
雅紀の頑張りと日々の努力は、園長先生と
職場の人達はもちろん…
こうやって初めて会った人達にも伝わって
いるんだから。
俺らの自慢の弟だから…
「自信をもて。笑」
END
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
