2002.【2】 ページ2
［智にぃside］
翔はベッドの前に
座り込んで「ごめんなさい」としか、
言わなくなった。
和が恐怖症に陥ったのは、翔のせいじゃない。
『翔にぃが検査をしてくれなかった』って
思い込んでしまったら、和は俺らに対する信頼感も
失ってしまう。
「翔？謝るのやめて、こっち向いて？」
翔「…っ、…めん、なさい…」
「検査できなかったことを謝ってんの？」
翔「…んっ、ん…」
コクッ、コクッと頷く翔を見ていると辛くなる。
俺がいくら「翔のせいじゃない」って言っても
状況は変わらず。
「もう、いいから！とにかく顔上げて！！」
感情的になって声を荒げてしまったら
翔はビクッとして…
それから…
「もう…辛いから、いい…」って。
「責めてくれた方が、よっぽどラクだよ…」って。
その言葉を聞いて、気が付いたんだ…
何度もみんなで話して進んできたつもりだったけど
俺らの立場と、翔の立場は違う。
俺がいくら「自分を責めるな」って言ったって
翔にとってそれは無理なことだったのかも
しれない。
「困惑するだろ？」って俺に何度叱られても
翔の中で元にあるものは変わらないのかも
しれない。
今さら、そんなことに気が付くなんて…
辛い思い、してたんじゃないかって…
どうしてやることが正解なのか、正直分からない。
でも体を小さくして「ごめんなさい」って
謝り続ける翔を何とかしてやりたくて…
「ごめんね、翔。
その気持ち、俺にも背負わせて…？」
そっと抱き寄せて背中をさすりながら声を掛ける。
そしたら「んっ…」って頷いてくれて。
「しょう…ごめんね。辛い気持ち、分かって
あげられてなかったね…」
翔「…っ、んくっ…ん、んーん…」
首を振りながら一生懸命にしがみ付いてくるから
抱き締めながら背中をさする。
いつもは医師としてドシッと構えてる翔が
今は、とっても小さく感じられる…
しばらくしたら「もう大丈夫。ごめん…」って
顔を上げた翔。
確かに迷いはない顔してるけど、真っ赤に
なった目が痛々しい…
和はそんな翔を見て、真っ先に飛んできた。
「ごめんね」って言いながら…
雅紀に背中をさすられながらだけど「翔にぃのこと
責めるつもりはないよ」って。
「あの検査の時は、どうしようもなかったって
分かってるから」って。
「今は翔先生だから、嬉しいよ」って。
和の気持ちは、翔の心の深いところに
ちゃんと届いた。
でも、あの時のことを思い出したら辛くなる。
それは仕方ないことだよね…
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
