5人で生きてゆく…【幼き記憶】 (ページ8)

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8.【尖端恐怖症】ページ8

［智にぃside］

雅紀の話だと
和は渋々
検査に向かったらしい。

戻ってきたら、いっぱい褒めてやらなきゃ。

俺らはそんな呑気なことを話していた。

だけど…戻ってきた和はストレッチャーに
寝かされていて、涙は拭いてもらってるけど
泣いたことが一目で分かった。

翔「今は薬で眠ってるんですか？」

状況が掴めず、フリーズする俺らの代わりに
翔が質問してくれた。

ってか、薬で眠ってる以外、何があるの？

そう思ったけど、看護師さんの口から出たのは
信じられない言葉だった。

看「検査が終わってすぐ、
意識を手放しました。痛みと恐怖から
解放された安心感からだと思います」

痛みと恐怖から解放？

一体、どんな恐ろしい検査を受けたのか…

検査の内容を把握する余裕がなかった
俺らは3人で俯いて、ただ反省した…

雅「あ、動いた」

検査から戻ってきて1時間が経った頃、
和の目がゆっくりと開いた。

「ごめんね、かず。痛かったね」

和「…！ぎゃー、やー」

翔「…かず？」

和「やー、やだー、ぎゃー」

近づいてきた翔の手から逃れようと
必死に後ずさる和…

翔「かず？」

和は頭をブンブン振って、手を振り回して
泣き叫んだ。

看「大丈夫ですか？」

すぐに看護師さんが来て、ベッドの周りの
カーテンを閉めて、ナースコールを押した。

和「…！ぎゃー」

駆け込んで来たお医者さんを見た和は
また意識を飛ばした。

目の前で起こっている状況が理解できない。

あれは和だけど、俺らの知ってる和ではない。

点滴から鎮静剤が入れられ、
和はベッドに寝せられた。

医「念のため、拘束させて頂きますね」

翔「念のためって何ですか？」

口調が強まる翔に対しても医師は冷静だ。

医「目を覚ましてみないと分かりませんが、
検査の恐怖からくるパニックだと思います」

翔「また今みたいになるってことですか？」

医「それは、目覚めないと分かりません。
でも、そうなった時の為に拘束させて下さい。
検査の詳しい状況を聞いて
きちんと説明しますので、お待ち下さい」

カーテンの閉まったベッドに横たわる和。

「ごめんね、かず…」

頭を撫でることくらいしかできない。

さっきの反省が後悔へと変わってゆく…

もう取り返しはつかないかもしれない。

さっきの和の豹変振りを見てしまった俺らは
嫌でもそう考える他なくて…

雅「あ、潤が学校から帰って来る前に帰るね。
家で色々おしえてね…」

雅紀は力なく笑って帰っていった…