20.【入院】 ページ20
［翔にぃside］
車から降りずに
泣き叫ぶ和。
こうなることは分かってた。
いくら言い聞かせても、大人しく入院を
してくれるはずがない…
智「おいで、かず」
和「やーだ…いかない…」
雅紀が反対側のドアから乗り込んで
和を無理矢理に押し出して、智にぃが抱えた。
和「ぎゃー」
駐車場で反り返って泣く和に
手が付けられない…
3人がかりで引きずるようにして
ようやく病院内に入った。
和「…わい。こわいー」
ひたすら拒否してた和は、
今度は恐怖から逃れようとしがみ付いてくる。
先「元気な声だね〜。いらっしゃい！」
和「ぎゃー」
診察室に押し込まれた和は
もう完全にパニック状態…
床を這って逃げようとして、
俺に抑え込まれた。
手をバシバシ叩いて泣き叫んでる。
先生に触れられ様もんなら
狂ったように叫んで体を捩る…
カウンセラーはその様子を見て、
パソコンに記録をつけてくれている。
先「先生の顔、覚えてくれたでしょ？」
和「ぎゃー」
先「和くんの新しい先生やらせてね」
和「ぎゃー」
今の和には誰の声も届いていない。
いつまでも泣き叫ばせたままでは
可哀想だけど、だからといって、いつまでも
逃げているわけにはいかない…
少しずつでもいいから、現実と向き合って
克服していかなきゃならないから。
一向に落ち着く様子のない和を
一度、腕の中から解放してやった。
泣きながら真っ先にドアの前まで
這っていって開けようとする和。
だけど、一人で出ることはしない…
このドアの向こうは和にとって、
やっぱり恐怖の世界に変わりない。
ドアを出たところで和は何からも
解放されないと自分で分かっているから…
先「入院は予定通り、来週からにしよう」
「はい」
先「個室を用意するから、24時間、
付き添ってもらって構わない。」
「はい」
先「始めは、和くんも、お兄さん達も
辛いと思うけど…一緒に乗り越えましょう」
先生はそこまで言うと、ニコッと笑って
手を差し出してきた。
「はい、よろしくお願いします」
ギュッと握られたその手は
大きくて頼もしくて…
この先生の下で働きたいって思った。
先「今日は脈だけとらせてもらおうかな」
少しでいいから、先生に触れられることに
慣れさせておきたい。
俺らはしっかり頷いて、和を囲むように
近くにスタンバイした。
先「和くん？ちょっと触ってもいい？」
ドアに向かって泣き叫んでいた和は
先生から逃れようとひっくり返って
暴れ出す…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
