素直じゃない ページ40
「オイ、こっち向け」
しばらく爆豪くんの掌を堪能していると、突然頭上から大好きな声が降ってきた。爆豪くんの方を向けと。それはできない相談である。私のまっかっかな顔を嘲笑われておしまいだ。
「イヤです」
「んでだよ」
「……イヤって言ったらイヤです」
「理由になってねぇ」
心做しか、爆豪くんの声色がいつもより弾んでいる気がする。きっと、さぞニヤニヤした顔で私の反応を楽しんでいるのだろう。
そう考えるとなんだかムッときて、言い返してやろうと爆豪くんの方へ向き直ると。
……そこには意地悪な顔でも、ニヤついた顔でもない、ただただ優しい表情をした爆豪くんがいた。
なんの前触れもなく落とされた爆弾に、思わず固まって何も言えなくなってしまう。
「A」
「は……はい」
そのまま爆豪くんは私の方へゆっくり顔を近づけてきた。
手をシーツに縫い付けられ、どんどん彼の整った顔が接近する。
距離が残り少なくなった所でやっと我に返り慌てて離れようとしたが、体力を使い切った今の体ではそれは不可能だった。
キ、キスされる！
そう感じ取り、目をぎゅっと瞑って身を固くした。
しかし、待てども待てどもそれはやってこない。
ゆっくり目を開けると、声を殺してくつくつと笑っている爆豪くんと目が合った。
さっきの柔らかな表情はどこへやら、ニヤニヤした顔でこちらを見てくる爆豪くんに呆然としていると、やがて彼は話し始めた。
「すげぇマヌケ面」
「……なっ！？」
どうやら私はキスを寸止めされ、その時の顔を観察されていたらしい。騙された。
楽しそうに笑う爆豪くんに一矢報いたかったが、今の私にはただ赤い顔で睨みつけるくらいしかできなかった。
「そんなにして欲しかったんか」
「いや、あの、その……」
でも、確かにキスされたくなかったといえば嘘になる。さっきはテンパって離れようとしてしまったが、本当は少し嬉しかった。
が、彼に乗せられるのが癪で口ごもっていると、突然ドアが開けられる音がした。
「おや、今日は爆豪もいるのかい」
「……チッ」
どうやらリカバリーガールが入ってきたらしい。
ひとまず助かりほっと胸を撫で下ろすと、爆豪くんは耳元で、
「……放課後空けとけ」
とだけ言い残して、そのままスタスタと去っていってしまった。
……ダメだ。刺激が強すぎる。
この十数分間で感情をかき乱されすぎてもう色々と死にそうになりながら、私はぽーっと遠くを見つめた。
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匿名希望より - 作者さんリゼロ好きですか？どこか既視感あるなと思いまして (2021年8月12日 2時) (
レス) id: 84a09a672a (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます！ こんなに長々と感想を頂けてとても嬉しいです。満足していただけて幸いです！ (2019年5月8日 13時) (レス) id: c4af4231ab (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - とても素敵な作品でした。終始涙が止まらないくらいに感動しました。爆豪勝己というキャラの良さが詰まっていて、満足出来ました。このような素敵な作品を作って下さりありがとうございました。 (2019年5月8日 2時) (レス) id: 0a19bd2b46 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます！確かに話を考えるのは大変ですが、作者の貧相な脳みそで精一杯物語を紡げるよう頑張ります！ (2019年5月4日 23時) (レス) id: c4af4231ab (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - いつも読ませてもらってます！展開が難しいかもしれませんが、更新頑張って下さい！応援してます！ (2019年5月4日 23時) (レス) id: 0b1ff1fc69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真実 | 作成日時：2019年4月17日 18時
