04愛してたって報われない ページ5
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『貴方にも、かつて恋人がいたって本当?』
組織の残党狩りが終わり、彼女に誘われるまま2人はバーを訪れていた。
唐突な質問に、赤井はゆっくりとその質問を噛み締める。
そして、少し戸惑いを孕んだ声で返した。
「‥‥なぜ、それを聞いた?」
『降谷から聞いた。
貴方にはかつて恋人がいて。
組織に始末されて。
貴方はその仇をとったんだって。
‥‥ねぇ、どんな気持ち?
この世で一番愛した人がいなくなるって、どんな気持ち?』
‥‥これが、ただの人間の質問なら、間違いなく赤井は殴り飛ばしていただろう。
だが、質問してきたのは彼女だ。
自分と同じ境遇に立つ、彼女自身の問いかけだ。
「‥‥憎んださ、全てを。
彼女を殺した、組織の人間を。
彼女を救えなかった、無力な自分を。
‥‥全てが終わった日、俺は死のうと思っていた。
彼女が存在しない世界で、存在意義を失った俺に、これ以上生きる理由が見つからなかった」
『‥‥じゃあどうして、貴方は生きてるの?』
彼女と目を合わせる。
無表情に赤井を見つめる彼女の瞳は、闇に染まっていた。
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「‥‥尊い、夜明けを見た」
『‥‥?』
「絶望という名の闇に染まった俺の世界に、夜明けが訪れた」
いつか、彼女の世界にも訪れたらいい。
彼女に巣食う闇を、優しく照らしてあげたらいい。
この世は、いつだって非情だ。
失いながら、何かを得て。
そしてまた、失っていく。
そうやって俺たちは、全てに絶望して。
‥‥誰かに、救われていくんだろう。
彼女が俺を、救い出してくれたように。
『‥‥貴方の表現て、抽象的すぎ。
なにも参考にならない』
「それは悪かったな」
でも、それなら残念ね。
そう言うと、Aは困ったように笑った。
『‥‥きっと私に、夜明けなんて一生来ないもの』
そう言ってまた、涙を溢す彼女をそっと抱き寄せる。
ハラハラと溢れ落ちる涙をぬぐいながら、熱を孕んだ声でそっと囁いた。
「‥‥君と、朝を迎えたい」
『‥‥さいごの思い出に、なんてね』
俺は、ゆっくりと、彼女と唇を重ねた。
【いつか、彼女を照らすであろう光が】
【自分であったら、どんなにしあわせだろうか】
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リエ(プロフ) - どうしようめちゃくちゃ好き無理大好き、設定も表現もストーリーも最高ですほんっとにマジで (2021年6月14日 21時) (レス) id: 470bfeaa7b (このIDを非表示/違反報告)
宿敵さん - 読み終わった時美しい話だと思いました!!とっても素敵でした!! (2018年2月12日 21時) (レス) id: 82f14ce098 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ2(プロフ) - すごい面白いです (2017年7月1日 13時) (レス) id: bc72a95a3a (このIDを非表示/違反報告)
ホノ☆(プロフ) - ロムさん» ありがとうございます!!その一言がたまらなく嬉しいものです(*^^*) (2017年6月30日 16時) (レス) id: b619beff59 (このIDを非表示/違反報告)
ロム - おおっ!いい作品見つけたぞ〜!ってパソコンの前で言ってしまった私。もはや変人 (2017年6月30日 16時) (レス) id: 693a45f20e (このIDを非表示/違反報告)
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