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短編小説 /遠距離恋愛の、君と/ ページ8

――――『唇にキス



外は、凍えるような寒さだった。
「う"ー、ざぶい」
赤いマフラーに顔を埋めて、暗くなってきた道を歩く。
「寒いね」
隣で彼も笑いながら言う。彼の体温を感じられる左手だけが、ふんわりと温かかった。

はらり、はらりと雪が降りだした。
それはゆっくりと地に落ち、辺りを白く染めていく。

駅までの道は、二人他愛もない話をして歩いた。
昨日見たテレビの話とか、近所に出来た美味しいラーメン屋さんの話とか、好きなアニメの話とか。
ゆっくり、ゆっくり歩きながら話した。

それでも、刻一刻とお別れの時間は近づいていて、遠くの方に駅のホームの屋根が見えた。
途端、胸のあたりがキュっとなって、泣きそうになる。

ねえ、もうお別れだよ。君は、寂しくないの?
―――わたしは、寂しいよ。

不意に黙り込んだ彼女を心配したのか、どうしたの、と彼は彼女の顔を覗き込む。
「………別に」

君は、いつもそう。
わたしの気持ちになんて、気付かないんだもん。
わたしばっかり、いつも―――

駅についた。
後は電車を待って、彼が帰るのを見送るだけ―――

「二番ホームに、列車が参ります―――」

アナウンスが殺風景なホームに虚しく響く。

「…じゃあ、ばいばい」
彼女は寂しさを押し殺して、笑う。

「ねえ、」

ファン、と電車が近づく音が聞こえる。

「そんなに寂しそうな顔しないでよ」
彼は彼女を引き寄せ、きつく、きつく抱きしめた。

「、苦しい、よ」
「またすぐに、会いに来るから」

彼は彼女の頬を両手で包みこみ、少し強引に上を向かせると、その冷たい唇に自らの唇を重ねる。
優しい、触れるだけのキスだったけど、それだけで体の中からぽかぽかするような暖かい気持ちになった。

「大好きだよ」
「……わたしも」
「…じゃあ、また」

ああ、君のその言葉で、私は次に会う日まで頑張れるんだ。




――――『愛情

短編小説 /君の目を奪うのは/→←小咄 お礼とお願い


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設定タグ:キス , 意味 , 零ーレイー   
作品ジャンル:得する話, オリジナル作品
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました!!鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです!こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています!頑張ってくださいね!! (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - とりあえず完結しました〜!皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします! (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/  
作成日時:2016年8月31日 18時

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