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「ここを歩けって事か…。」
目の前の細い1本道。
少しでもバランスを崩せば左右は谷。
そっと覗いてみるが霧がかっていて底は見えない。
「多分ネブラ様の霧だろうなぁ。」
きっと私は元の場所に居る。
ということは、ここで長くじっとしている訳にはいかない。
「荒療治ってこういう…。」
たしかに一本道しかないのだからそこしか歩けない。
ここを正しい姿勢で歩き切ることができれば自然と身につくだろう。
現実ではないと分かっては居てもこの状況は背筋が凍るが。
深呼吸して心を落ち着ける。
さっきまでのネブラ様の言葉を思い出し、1歩ずつ足を進めた。
姿勢は完璧、裾捌きも何とか。
道が1本しか無いことで他に意識を向けることが出来る。
「いい感じいい感じ…あっ!!」
ふいに少し強めの風が吹き、気を取られた瞬間に体制を崩してしまう。
落ちる、と固く目を閉じると意外とすぐに地面の感触があって。
「怪我はない？」
すぐ近くでネブラ様が眉根を寄せて私を見下ろしていた。
「はい、大丈夫です。」
そう言って辺りを見れば、やはりここは先程の庭。
だが私が立っていたであろう場所には真っ直ぐの道とその左右に掘られた溝。
少し離れた所で数人の使用人が待機していて、その内の一人は魔導書を構えていた。
「これは…。」
「私の幻だけだと踏み外しても地面だし、あなたが突っ立ってる間にちょっと掘らせたのよ。途中まで順調に歩いていたけれど体幹が悪そうだったから彼には風魔法を。」
「な、なるほど…。」
つまりはあのくらいの風では揺らがない程の体幹が必要だと。
そしてまんまとバランスを崩した私は掘られた溝に足を取られて転倒してしまったと。
この浅い溝があんな崖に見えていたとは…霧、すごい。
「すぐに倒れてしまうような歩き方じゃ駄目よ。普段歩いてても風程度では転けないでしょう？」
「確かに…そうですね。もう一度お願いします。」
そう言えば、ネブラ様は少し驚いてからふふふ、と上品に笑った。
私が転ぶ度に何度も魔法を掛け直してくださる。
足を捻ったりもしたが、その位ならすぐに自分で治せる。
そうして何度も繰り返して、ようやく初めて示された場所まで歩き切ることが出来た。
「ネブラ様！ようやく歩き切れました…！」
「そうね。あと何度か繰り返してそれが偶然で無いと分かれば今日はこの辺にしておきましょう。あなた酷い格好だわ。」
空はそろそろ夕暮れ時。
随分と長時間没頭していたようだ。
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緋毬(プロフ) - メリアさん» 普段は隙が無さ過ぎて見れなさそうですもんね！興味深すぎます（笑 (2019年4月19日 23時) (
レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
メリア - 前髪解いたらどんなノゼル兄様になるのか見てみたいですね！ (2019年4月19日 23時) (レス) id: edc4abbf43 (このIDを非表示/違反報告)
緋毬(プロフ) - モンキッキーさん» いつもありがとうございます♪私もドキドキしながら作ってるので、これからも一緒にドキドキしてください(´∀｀*) (2019年4月14日 23時) (レス) id: ef0ebcf362 (このIDを非表示/違反報告)
モンキッキー(プロフ) - とても面白いです！読むたびにドキドキさせられます！これからも更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2019年4月14日 23時) (レス) id: c0ef88c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緋毬 | 作成日時：2019年4月14日 22時
